ジェームズ


季節は夏、外は暑苦しいくらいに太陽サンサン。むしろギラギラ。
気温なんて知らないけれどたぶん30度なんて余裕でこえてる。
ま、私はクーラー様の働きで快適に過ごしているわけだがな。
室内最高。


「やあなまえ!遊びに来たよ!」

「帰れ。」


バンッと大きな音を立てて扉を開けたのは、認めたくはないが幼馴染であるジェームズ。呼んでもいないのに勝手に部屋に入ってきたジェームズに、すぐさま帰れと言うのは普通のことである。不法侵入もいいところだ。
だがそんなことで大人しく帰るわけないコイツは、勝手に座りこむと話を聞いてと騒ぎ出した。


「やっぱり僕ら、運命なんだよ!」

「気持ち悪い。」

「いやいや、僕となまえのことじゃないよ?」

「当り前だ、シバクぞ。」

「まぁまぁ、照れなくてもいいじゃないか!」

「お前はそんなに死にたいのか?え?」


にっこりと、普段コイツに笑わない私が笑って言えばジェームズは全力で土下座する。
その背をベッドに座る私は全力で踏みつぶす。ホント学習能力のないやつめ。


「あのっ!痛いっ!痛いよなまえ!」

「当り前だ、全力で踏んでるからな。」

「ちょっと!大事な幼馴染じゃないか僕は!」

「そんな事実認めたくないんだよ、私はね。」

「ちょ、マジで痛いって!さらに力こめないでよっ!」

「おおっと、全身が滑った。」


足だけじゃなく、もうその背に座る私にジェームズは手をバンバンと床に叩きつけギブアップを示す。
これ以上うるさい奇声を聞き続けるのもアレなので、とりあえず背から降りて解放すればゼーゼーと息をし始めた。
それはそれでうるさいな・・・。


「だ、からねっ!運命だったんだよっ!」

「良かったね。」

「それだけっ?!何が?とか聞かないの?気にならないの?!ねぇ!」

「ならんな。」

「酷いっ!酷いよなまえ!」


ハンカチを噛みしめどこぞのヒロインみたいに嘘泣きを始めるジェームズ。
・・・ねぇ、そのハンカチはどっからだしたのさ?
そしてなんか色々古いぞ。


「僕はただっ!ショッピングに行ったらリリーを見つけて目が合ったって話をしたかっただけなのに!あんな広い所でそれも夏休みにリリーに会うなんて運命だって言いたかっただけなのに!」

「言えたじゃないか、ほら帰れ。」

「だから酷いっ!僕への扱いが酷過ぎる!」

「いいか、私は夏が嫌いだ。」

「それは知ってるよ!それとこれになんの関係があるんだい?!」

「お前が居ると暑苦しい、色んな意味で。」

「つまり、それって・・・!」

「そういうこった。ほれ、帰れー。」


酷いっ!とどこぞの乙女の様に走り去っていくジェームズに、漸く私はクーラー様の働きをまた感じることができた。
毎年、夏の暑さで私に八つ当たりされるくせに懲りないやつだな、ホント。


(夏は嫌いなんですよ)


(ねぇねぇなまえ聞いてー!)
(懲りないお前はマゾか。)




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あきゅろす。
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