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遊戯王 反逆のルルーシュ R
TURN 14 奇跡の剣
「くっ…(マズイ…このままでは…)」

 サイファー・スカウターは戦士族との戦闘の際に攻撃力、守備力を2000ポイントアップさせる。DNA改造手術のあるこの状況では常時攻撃力3350のモンスターであるのと同義だ。

 攻撃表示の無頼(日本解放戦線の軍服の男になっている)を攻撃されればそのダメージは1750。朝比奈を狙われてもダメージは1350で終わりだ。

「(ここは…)…俺は月下を守備表示に変更。ターンを終了する」

 残された一枚にかけるしかない。

「いいの? それじゃボクのターン! 引いたカードは『龍骨鬼』! サイファー・スカウターを生け贄に捧げて召喚するよ!」

龍骨鬼 ATK 2400

 魔法使いと戦士を屠る能力を持った骸骨でできた鬼がフィールドに現れる。さらに…

「手札から死者蘇生! ボクの墓地にいるサイファー・スカウターを蘇生!」

 墓地より再びサイファー・スカウターが姿を現す。

「バトル! サイファー・スカウターで無頼を攻撃!」

 スナイパーライフルの照準が無頼を捕らえる。

「伏せカード発動! 罠カード『日本解放戦線の最期』!」

 無頼がその照準をかわし、敵陣へとひた走る。サイファー・スカウターが慌てたように引き金を引くが、足を撃ち抜くに留まる。

『日本…万歳!』

 もんどりうって倒れ込んだ男はそう叫ぶと懐から取り出したスイッチを押した。
 それと同時に流体サクラダイトが起爆し、強烈な閃光と爆音が響き渡る。

「うわぁっ!?」「っ…」

爆煙が晴れた後には朝比奈とダールトン、そして相手のサイファー・スカウターのみが残されていた。

「いったい…「日本解放戦線の最期はレベル4以下の闇属性モンスターを生け贄に発動する。そして相手の手札、フィールド上に存在する攻撃力1500以上のモンスターを全て破壊する!」なっ…」

これで攻撃表示であった無頼を処理しつつ、龍骨鬼を破壊できた。

(相手のミスに救われたな…だが…)

「それでもまだボクのファールドにはサイファー・スカウターがいる! 攻撃対象はグロースターに変更! 行っけぇ!」

 放たれた銃弾は過たずにダールトンの胸を撃ち抜いた。

「すまないダールトン…」

ルルーシュ LP 1300→50

 うめき声を漏らすこともなく崩れ落ちる異母姉の忠臣に俺は己の無力さを噛みしめる。

「ボクはこれでターンを終了」

「俺のターン! ドロー。メインフェイズに移行。手札から魔法カード『フジ鉱山〜サクラダイトの採掘〜』を発動! 手札一枚をコストに三枚ドロー!」

「くっ…(紅蓮もグラスゴーも無しか…だが)俺は伏せカードを一枚出し、フィールド魔法『天帝八十八陵〜援軍なき籠城戦〜』を発動する!」

 フィールドに現れるのは岩山を利用した巨大な陵墓。

「このフィールド魔法が存在する限り互いに守備表示のモンスターには攻撃宣言をすることはできない」

「ムム…面倒くさいカードだね…」

幸い相手の手札には除去カードはない。今は守りを固め、ターンを稼ぐしかない。

「さらにカードを一枚伏せてターン終了」

「ボクのターン、ドロー。今引いた『強欲な壺』を発動! デッキから二枚ドロー!」

ケインは引いたカードを見てニヤッっと笑った。

「行くよ! 手札から『サイクロン』発動! 対象は天帝八十八陵!」

破壊の風がフィールドに吹き荒れる。

「これで陵墓は消え…って!?」

 ケインの顔が驚愕で彩られる。それもそうだろう。なぜなら…

(頼むぞ星刻、四聖剣…)

 青い官服を纏った黒い長髪の男を筆頭に、刀を携えた五体のモンスターによってフィールドが埋め尽くされていたのだから。

『第八世代 神虎』 DEF 2800  『月下』トークン×4 DEF 1800

「天帝八十八陵が破壊された時、デッキ、手札または墓地から神虎を特殊召喚できる。さらに発動した『四聖剣見参!』によって月下を生け贄に四体のトークンを特殊召喚しただけだ」

 例えサイファー・スカウターが攻撃力3350を誇ろうが貫通能力を持つわけではない。天帝八十八陵がこれ程早く破壊されるのは計算外だったがこれでどうにかターンを凌ぐことができる。

「うぅ…ならバトルフェイズに移行! サイファー・スカウターで神虎を攻撃!」

 サイファー・スカウターのライフルが星刻に照準を合わせる。撃ちだされる銃弾を星刻は紙一重で避け、サイファー・スカウターに肉薄しようとする。しかし無茶な動きが祟ったのか激しく咳きこみ吐血した瞬間、ライフルに撃ち抜かれて崩れ落ちた。

(すまん星刻…だが決して無駄にはしない)

「カードを伏せてターン終了だよ」

「俺のターン…」

 この状況…相手のもう一枚のカードは先程強欲な壺で引きこんだ『安全地帯』…
 『王宮のしきたり』と合わせて強固な耐性をサイファー・スカウターに付与できる…
戦闘および効果による破壊を封じられた今、この状況を逆転できるカードはあのカードのみ。

「(応えてくれ…)ドロー!」

 祈りにも似た気持ちで俺はカードをドローする。残りのデッキから一枚のカードを引き当てる確率はおよそ三パーセント。限りなく分の悪い賭だ。それでも…

 遊戯は俺に言った「信じれば共に戦ってきた仲間《デッキ》は応えてくれる」と。
 このデッキは俺が今まで共に戦ってきた者達で構成されている。だから…

「ボクはスタンバイフェイズ時に伏せカードを発動させてもらうよ! 永続罠『安全地帯』!」

 これでサイファー・スカウターは戦闘では破壊されず、効果の対象にもならない。さらに『王宮のしきたり』によって破壊することも『安全地帯』を破壊することも不可能。

「俺は…手札からこのモンスターを特殊召喚する!」

『第七世代 斬月』 ATK 2800

 現れるのは四体いた月下とよく似た黒い機体。しかし決定的な違いは頭部から二本の赤い房が垂れていることだろうか。
 その姿を見せたのは一瞬、即座にDNA改造手術の効果を受けてその姿は人のそれに変わった。一振りの軍刀を携えた屈強な軍人。“奇跡の藤堂”の異名を持つ武人、藤堂鏡志朗。

「斬月の効果。自分のフィールド、又は墓地に存在する『月下』及び『暁』と名の付くモンスターの数×300ポイント攻撃力・守備力がアップする」

 フィールドには月下トークンが四体。そして墓地には月下が一体の計五体。

斬月 ATK 2800 → 4300

「攻撃力4300…それでもサイファー・スカウターは戦闘によっては破壊されない。それに僕のライフを削りきるには及ばないよ?」

 確かにそのまま攻撃したところでダメージは950どまり。だが…

「既に状況はクリアされている。俺は墓地に存在する『四聖剣見参!』を除外し、効果を発動!」

「なんだって!?」

「墓地に存在する四聖剣見参は除外することで斬月の攻撃力をフィールド上に存在する月下および暁の数×800ポイント上昇させる。即ち…」

斬月 ATK 4300 → 7500

「そんな…」

「行くぞ…斬月でサイファー・スカウターを攻撃! 藤堂!」

『承知! 斬撃活殺自在陣を仕掛ける!』

『『『『承知!』』』』

 藤堂の指揮のもと四聖剣が動いた。卜部と朝比奈が両脇から迫る。サイファー・スカウターは左から迫る朝比奈に照準を合わせ、引き金を引いた。朝比奈は身を捌いて飛来する銃弾をかわす。
朝比奈の足が鈍ったのを見て第二射を放とうとしたサイファー・スカウターだったがその目論見は即座に狂うことになる。朝比奈の背後から身を屈めて千葉が斬りかかってきたからだ。咄嗟に銃口を千葉に向けようとしたがその照準は一瞬で上方に逸れていた。
卜部の放った斬撃がスナイパーライフルの銃身を捉え、跳ね上げたからだ。千葉の斬撃を跳躍することでかわしたサイファー・スカウターだが、その正面から藤堂が既に間合いを詰めていた。そして放たれる必殺の突き。後ろに下がって威力を殺そうとするサイファー・スカウターだが、その退路は既に仙波によって塞がれていた。一撃目は身を捩り、二撃目で身を屈めてかわす。だがそこまでが限界だった。
三段突きの最後の一撃がサイファー・スカウターの喉笛を捉えた。鋭利な軍刀が装甲を貫き、動力回路を切断する。
しばらくもがく様にしていたサイファー・スカウターだったが事切れるように崩れ落ちると激しい閃光と共に爆発四散した。

「(紙一重の勝利か…)俺の勝ちだケイン・カトウ」

 そう俺は呆然としているケインに告げる。

「す…」

「す?」

「すっげー! 何今の! めちゃくちゃカッケーんやけど!」

 呆然としていたケインは目をキラキラさせて、興奮したようにこちらに駆けよってくる。

「モンスターもめっちゃカッコいいし、やっぱお兄ちゃんとの決闘を選んで正解やったわ!」

「そ、そうか。それはよかった」

 前前からこういう無邪気な手合いは苦手だ。ショップで多少は慣れたかと思っていたが、さすがにここまでぐいぐい来る子どもはいなかった。

「こらこらケイン。だめですよ、あまり迷惑をかけては」

 決闘を終えたマイコ・カトウがケインを諌める。その表情は決闘者のそれではなく祖母としての物だ。

「遊戯は勝ったようですね」

 ケインが離れた事に軽く安堵の息を吐きながら俺はマイコ・カトウの方を向き直った。

「ええ、さすがはキング・オブ・デュエリスト。あと一歩のところだったんだけどねぇ」

 そう言ってマイコ・カトウは笑う。

「ケインも随分と腕を上げたみたいね。そろそろ本気を出さなきゃおばあちゃんも負けるかもしれないわ」

「へへへ…」

「すみませんマイコ・カトウ。遊戯はどこに?」

 和やかに談笑をしているところに悪いが、遊戯の姿が見えない。勝ったのだから既に先に進んだかとも思ったが遊戯の性格を考えるとそうは思えない。

「ああ、あの方ならあちらに」

 そう言ってマイコ・カトウが示した先。そこには天馬と対峙する遊戯の姿があった。

―――

「さてケイン。懸賞金はダメだったけどどこかで美味しい物でも食べて帰りましょうか」

「うん! あ、でもボクの決闘で少しは報酬出るんやない?」

「そうね…(この子が新たに使わせたカードは七枚。この子の成長ぶりも見られたし、悪くない仕事でしたね)」

 そう言ってマイコ・カトウは車いすをケインに任せる。

(次にあなた方が当たるのはパーフェクトデュエリストと呼ばれる人物…。そして寵児の健闘を祈りますよ決闘王。機械騎士使いさん


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あきゅろす。
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