ぬらりひょんの孫 〜天狐の血を継ぐ陰陽師〜
2012年 5月19日 ゆら誕生日企画
…白い。
目を開けた第一印象はそれであろう。
「起きたか? ゆら」
「昌彰…」
すぐに昌彰の姿が目に入ってゆらは安堵の息を漏らした。
「ここは…?」
布団から起き上がって改めて辺りを見るが、辺り一面真っ白な世界が広がっている。
(昨日は確か…)
ゆらはぼんやりと記憶を辿った。自分の部屋で眠りについたはず…
「ああ…とりあえずこいつを見ればわかる…」
苦々しげな笑顔を浮かべ、昌彰は一通の白い封筒を差し出した。
「なんなん? コレ…」
嫌な予感をヒシヒシと感じながら封の開いている封筒から一枚の便箋を取りだした。
「………」
時折顔をひくつかせながら静かに読み終えたゆらは、たっぷり数十秒沈黙した後、その便箋を握りつぶし…
「あんの…ボケ筆者――っ!!」
絶叫した。
“ゴメンね。試験(×2)と実習(+レポート)が被って本気《マジ》で余裕がない…”
辛うじて潰れた便箋からその一文が見て取れた。
「なら無理に上げるなと言う話なんだが…落ちついたかゆら?」
呆れたように呟いて、昌彰はぐったりと肩で息をしているゆらに声をかけた。
「はぁ…無駄に叫んで疲れた…」
深々と溜息をついてゆらは顔の横に流れていた髪を払った。
「…え?」
驚いてゆらが振り返ると黒絹のような髪がふわりと広がった。
「コレ」
昌彰は驚愕しているゆらにもう一枚の便箋を見せる。
“プレゼントの代わりと言う訳じゃないけどまた髪を伸ばしてみたよ”
「……なんでコレなん? 嬉しくないわけやないけど…」
ゆらはそう言って髪を一房持ちあげた。光沢のある黒髪はパラパラと指から零れ落ちる。
「まあ、ちょうどいいかな…」
そう言って昌彰は桐でできた小箱を差し出した。
「開けてみてくれ…」
「…コレって…!」
箱の中に入っていたのは柘植でできた櫛に濃い赤の瑪瑙と銀細工をあしらった一本の簪。
「こっちに…」
ゆらに背を向けさせて、昌彰は櫛を手に取った。
丁寧に毛先から少しずつ梳いていくと、昌彰の手から滑らかに流れおちる。
「ん…」
「わるいゆら…痛かったか?」
声を漏らしたゆらに昌彰は手を止めて訊ねる。
「う…ううん! だ、大丈夫!(気持ちよかっただけやし…)」
「ん、ならいいが…痛かったら言うんだぞ?」
梳った髪をいくつかの房に分け、ヘアピンで留めて結いあげていく。
「ゆら」
「あ、うん…」
仕上げにゆらがずっと持っていた簪で留める。光を弾き、煌めくそれはゆらの黒髪によく映えた。
「ゆら、誕生日おめでとう!」
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