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ぬらりひょんの孫 〜天狐の血を継ぐ陰陽師〜
2012年 元旦企画 初夢
ピピッ、ピピッ!ピピピピピ…ガッ

目覚ましの音で目が覚める。日付は一月一日、時刻は午前五時半。寝たのは三時過ぎだから睡眠時間は二時間ちょっと。

さすがに寝たりない…。もう一度寝なおすか…

寝返りを打って再び睡魔に意識を委ねた。だが沈もうとする意識をパタパタとスリッパが床を蹴る音が引き止める。

「昌彰、起きとる?」

起こしに来たであろうゆらの声が聞こえてくるが、無視だ。

総会に出て寝てないのだからもう少し寝かせてほしい…。

「しゃーないな〜…二人ともお父さんを起こしてきてな」

反応のない俺に諦めたのか再びスリッパの音を響かせてゆらが去っていくのがわかった。

「(…ん、後一時間くらい)わ!?」

突如腹部に襲い掛かる二つの衝撃。それによって俺の意識は強制的に覚醒させられた。

「父さん!」「お父様!」

俺はその正体に気づいて身を起こした。

「…二人とも、起こすならもう少し優しくしてくれ」

布団の上に転がっているのは黒髪の双子。一人はゆらに似た女の子、もう一人は俺の幼少期によく似た男の子だ。

「今度からね〜」「ね〜」

二人の頭を撫でていると再び睡魔が襲ってきた…

「二人ともお父さん起こし…って、何しとるん…」

双子を抱きかかえたまま眠りにつこうとしたところで再びゆらが戻って来た。

「ほら二人とも着替えておいで。今日はおじいちゃんの所にも行くからね」

「「は〜い」」

ゆらに言われて子どもたちは元気よく部屋を飛び出していった。

「まだ六時前じゃないか…七時にはちゃんと行くから…」

欠伸を噛み殺しながらベッドから出て着替えを始める。

「新年祝賀の儀に職場のトップがそれじゃ部下に示しがつかんのと違う?」

そう言いながら差し出してくる背広に袖を通して装備を確認する。

「それに先にあいさつに行っとかなお義父様からもなんか言われると思うけど?」

「ああ…そうだな」

仕込んである呪符と呪具を確かめ終えて降魔の剣を背へと収める。

「じゃあ行こうか、ゆら」

「うん!あなた」

††††

『起きろ昌彰』

『いつまで寝てんのよ!いくら正月だからって遅すぎるわよ!』

腹部への二つの圧迫で昌彰は目を覚ました。

「玄武…?太陰?」

小柄な神将の二人が昌彰の上に乗っかっていた。

昌彰が首をひねって時計を見れば日付は一月二日の午前六時。

「え…っと、あれは…夢?」

徐々に昌彰の頭が覚醒し始めた。

『ん?初夢でも見たのか?陰陽師の夢はただの夢ではないが…どうした昌彰』

途中から真っ赤になった昌彰に玄武は訝しげに首を傾げた。

「いや、何でもない」

昌彰は熱くなった顔を振って熱を逃がすと布団から出る。

『今日は若明から一般参賀の警護を命ぜられてるんでしょ』

「そうだった」

太陰の言葉に昌彰は焦ったようにクローゼットからスーツを取り出した。

今日の仕事に当たり実家から送られてきたものだ。

手触りで上等なものだとわかる生地だが、さらに守りの呪《しゅ》も折り込まれている呪的防御も高い代物だ。

ゆらの方にも送られていたがそちらの方の中身は確認してない。

「ゆらの方はどうなってる?」

袂や懐に呪符と呪具を仕込み、それを着込むと昌彰はゆらの部屋へむかいながら朱雀に問う。

『今、天貴と天后が着付けている』

「ん?着付け(・・・)…?ゆら準備済んだか?」

昌彰がそう疑問を呈する前にゆらの部屋の前へと到着する。

「お、お兄ちゃん!?ちょ、ちょっと待って!」

部屋の中からゆらの焦った声が聞こえてくるが天一が扉を開け放った。

『昌彰様、どうぞ』

満面の笑みを浮かべた天一に促されて昌彰はゆらの部屋へと足を踏み入れる。

「え…」

『いかがですか昌彰様』

一言発して固まった昌彰に天后がゆらの背を押して昌彰の前に進ませた。

「えっと…どう?お兄ちゃん」

そう言ってゆらはくるりと一周回って見せた。晴れ着の袖が風を孕んで翻る。

ゆらが纏っているのは白地に濃紺のグラデーション、それに紫の胡蝶蘭をあしらった振袖だ。

「に、似おうてへん?」

固まった昌彰に不安になったゆらはそう上目遣いで問いかける。

「あ、ああ…すまん、似合ってるぞ。凄く…」

昌彰が言葉に詰まった理由、それは夢に出てきたゆらの着物。

それが今着ているゆらの物を留袖にしたものだったから…


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