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ぬらりひょんの孫 〜天狐の血を継ぐ陰陽師〜
第二十三夜 白昼夜 〜交差する探偵と魔術師と陰陽師〜A
††††

―時間軸は最初に鬼女が目撃された夜に戻る―

「……」

FFF団と共に零牙討伐に参加していた早川龍之介は息苦しさに目を覚ました。

首を巡らせて枕元の時計を見れば午前二時過ぎ…いわゆる丑三つ時である。

何故そんな時間に目が覚めたのか訝しりながら龍之介は身体を起こそうとした。だが…

「!?」

身体が全く動かない。いや、辛うじて首だけは動かせる。

だがそれ以外は文字通り指一本動かすことができない。

『我…………か…?』

「っ!?」

そこに掠れた音…いや、声が聴こえた。

窓にかかったカーテンが風ではためく。

(おかしい…)

龍之介は必死で冷静さを保とうとした。

最近は熱帯夜でクーラーなしでは眠ることができないほどだ。

実際、今夜も窓を閉め、クーラーをかけて寝たはずだった。

『…を………ぬし…か…?』

「え…あ…」

カーテンの隙間から一瞬見えたのは白い着物。

闇にとけ込むような黒髪に…鬼の仮面。

ゴァッ!

「(うぁ…っ…)」

放たれたのは徒人の目に見えぬ霊圧。

それは一瞬で龍之介に迫り、声を上げる間もなくその意識を刈り取った。

窓の外にいた鬼女はしばらくその場に何をするでもなく佇んでいたが、やがて闇に呑まれるようにして掻き消えた。

††††

―週末・布留部市―

京都と似た霊気。大地に流れる龍脈が富んでいるためだろうか…

そんな街を昌彰とゆらは歩いていた。

雑多なビルが立ち並ぶ中、ぽっかりと開いた空間に出た。

ビルの谷間に間違いのように建っている一件の古い洋館。

しかし、みる者がみればその洋館は堅固な結界で護られていることに気づくだろう。

そして門の脇に掲げられている古ぼけた青銅の看板の真の意味にも。

「着いた…」

「ここが…“アストラル”…」

昌彰とゆらは黙って洋館を見ていたが、やがてどちらからともなく一歩を踏み出し、洋館の庭へと入っていく。

コンッコンッ!

古めかしい扉についたノッカーを叩く。

「連絡通り未の刻きっかり…ようこそいらっしゃいました。安藤様、花開院様」

対応に出たのは灰色の髪と切れ長の目、常に平安風の羽織をまとった青年。

ただその足元や肩あるいは頭上にブチ、白、三毛、黒猫といったつごう四匹の猫が纏わりついていた。

「「………」」

あまりにも突拍子もない格好の人物の出迎えに昌彰とゆらは面を喰らった。

だが二人はすぐにその猫たちの正体に気付いた。ただの猫ではない、ゆらの貪狼や昌彰の十二神将と同じ式神だと。

「ああ、猫屋敷さん!いきなりそんな格好で出てったらお客さんだってビックリしますよ!」

その後ろから黒いスーツを着た高校生くらいの少年が出てきた。

「あ、安藤さんに花開院さんだね。初めまして、『アストラル』の代表取締役社長 伊庭いつきです」

そう言ってぺこりと頭を下げた。

「あ、初めまして。安藤昌彰といいます」

「花開院ゆらです。初めまして」

つられて昌彰達も頭を下げる。

「社長、お客様に立ち話させるのもなんやし。お通ししいや」

さらにその後ろから関西弁の女性の声が飛んできた。

昌彰達がそちらに目を向けると栗色の髪にアイスブルーの瞳を持ついつきと同じくらいの年頃の少女が奥から顔をのぞかせていた。

その頭には黒のとんがり帽子が載っている。

「穂波・高瀬・アンブラーや。お二人ともこちらへどうぞ」

穂波に促されて昌彰達は応接セットのあるオフィスへ通された。

―――

「!?」

オフィスに入った昌彰とゆらは驚きで足を止めた。

目の前ににふわふわとお盆に乗った紅茶のポットとティーカップが浮いていたからだ。

「いらっしゃいませ。ようこそアストラルへ」

そのお盆を操っているのはメイド服姿の幽霊だった。

「黒羽、みかんちゃん達は?」

いつきが幽霊課正社員の黒羽まなみに他の社員、葛城みかん、オルトヴィーン・グラウツ、ラピスと言った年少メンバーについて訊ねた。(尤もオルトに関しては昌彰達と同じ年だが…)

「みかんちゃん達なら今オルト君に呼びに行ってもらってます。どうぞ」

そう言って黒羽は騒霊現象《ポルターガイスト》を駆使して、ティーカップを昌彰達の前におく。

「そうですか…では、御依頼の件について詳しく伺いましょう」

昌彰達の向かいのソファーに社長のいつきを中心に猫を纏いつかせた陰陽師、猫屋敷蓮、ケルトの魔女、穂波・高瀬・アンブラーが左右を固める。

「依頼はある妖怪―ダイダラボッチの封印です」

その妖怪の名を聞いて微かに猫屋敷と穂波の顔が揺れた。

「ダイダラボッチって…あの巨人の?」

いつきだけが素朴な疑問を口にした。

「社長…一応魔術結社の首領がそれは…いやまあ、妖怪関連の講義は後回しにしとったからしょうがないか…」

「ご、ごめん…」

穂波は溜息を禁じえない。

「ダイダラボッチというのは富士山や浜名湖を作ったと言われる妖怪ですよ」

猫屋敷が薄く微笑みを浮かべていつきに説明を入れる。

「国造りの神様ってする説もあるんだよ!」

「うわっ!? みかんちゃん!?」

そう言いながらいきなりいつきの後ろにピンクのツインテールの巫女服の少女が飛びついて来た。

「みかん、いつきにくっつき過ぎ」

その後から真紅の髪を持つ東欧系の少女がみかんを引っ張る。

「こらお前ら客がいるんだ、少しは大人しくしろ!」

さらにその後ろから亜麻色の髪に耳当て付きの帽子に皮のコートを纏った昌彰と同じ年頃の少年が入って来て二人を怒鳴りつける。

「ああもう三人とも落ちついて!」

そのまま口げんかに発展した三人の言い争いをいつきが止めにかかる。

「はぁ…いっちゃんは相変わらずなんやから…」

「まぁいいじゃないですか穂波さん。それより今回の依頼の報酬についてですが…」

神とも評される妖怪の封印。それはまさに神の封印に等しい。

「“協会”規定の準一級相当AAランクの料金支払い。成功報酬にこちらでいかがでしょう?」

そう言って昌彰は呪符で封印を施した小瓶を机の上に置いた。

「これは…」

猫屋敷は普段から細い目をさらに細めた。

「これが本物だとすると…さすが安藤家といったところですか…」

「猫屋敷さん…その羽根…」

穂波もその羽根の放つ呪力に驚きを隠せない。

「ええ、その羽根を浸した酒を飲めば五臓六腑が焼け爛れて死に至るという幻の毒鳥…鴆の羽根です」

昌彰が鴆とあった際に譲り受けた彼の羽根だ。魔術においては最上級の呪物となる。

「こんな貴重な呪物、いまどきトリスメギストスのような専門の呪物商でも取り扱っていませんよ。日本では既に絶滅したとされていましたからね」

猫屋敷の目には喜色が伺えた。

「いかがでしょう? うちからの依頼受けていただけますか?」

††††

―翌週・月曜日―

「暑い…」

「言うなミア…余計に暑くなる…」

木ノ花学園初等部の六年六組の教室では猛暑に耐えかねて生徒達がぐったりと机に突っ伏していた。

普段なら冷房があるのだが、気温三十七度という猛暑日に限って故障という不運に見舞われている。

「レイ〜、なんかないの〜? 涼しくなる道具とかさ〜」

「オレはドラ○もんか!? さすがに準備してねえよ…。今日に限ってエアコンが故障だなんてな…」

さすがの零牙も想定外の事態に打つ手がないようだ。

「じゃあ涼しくなる話でもしよっか?」

そう話しかけてきたのはクラスメイトの藤井美咲と一ノ瀬杏子だ。

ショートカットで伊達眼鏡をかけた大人っぽい美咲と小柄でツインテールの幼げな杏子はタイプの違う美少女コンビである。

これに雅が入ることで六年六組の美少女トップスリーの完成だ。

「涼しくなる話って…怪談でもするのか?」

美少女三人に囲まれている何とも羨ましい状態でも零牙はぐったりしたままだ。

まあ、零牙は雅の彼氏であることは周知の事実なので周囲からのやっかみの視線は少ない。(FFF団の殺視線は除く)

「二人ともあの噂はもう聞いた?」

「噂って?」

ようやく零牙が顔を上げた。

「聞いてない?最近学園内に不審者が出るって話」

「小萌先生が『最近変な人が出るらしいですから、皆さん気をつけて帰るんですよ〜』って言ってたやつ?」

雅は担任の幼女《ロリ》教師の口真似でそう言った。(どこかから「誰が幼女ですか〜!」という声が聞こえたような気がしたが気にしない)

「そ、夜中に先生達も帰った後に出るらしいよ。警備員の人が何人も目撃してるって」

「あれって学園内の事なの?」

杏子の言葉に雅は少し驚いた。普通不審者がどうこうと言われる場合、通学中の事だと思っていたようだが…

「らしいよ。先週くらいから出始めて毎晩出てるんだって」

美咲の話によると、さすがに一週間を超えても出てきたらしく学校側も無視できないレベルになっているらしい。

「一週間も連続で出てたんなら普通捕まるんじゃない?」

雅の疑問も当然だ。いくらなんでも一週間も続けば何らかの対策を講じるはず。それで捕まらないはずがない。

「でもさ、それで警備の人が巡回を増やしたりしたらしいけど結局捕まらなかったんだって」

消えるのも現れるのも突然であるため、警備の人間は後手に回らざるを得ないのが実情だ。

「そこでもう一つの噂が立ったんだよ。その人は幽霊なんじゃないか?ってね」

「幽霊?」

雅は軽く首を傾げた。

美咲は一時期、ある理由から幽霊やオカルトに異常に執着した時期があった。

今では普通だが、多少そっち関連の話題には相変わらず詳しい。

「そ、幽霊。聞いた話だけどさ。完全に逃げ道を塞いだはずのところから消えたり、出入り口が施錠されている部屋にいきなり現れたりするんだって」

完全に逃げ道を塞がれながらも消えては現れる。その様はまるで亡霊のようであるとのこと。

「ふ〜ん…」

雅はかつて自分の使ったトリックを思い出してみた。

あれはピアノの音だけだったからどうにかなったのだが、今回は姿を見られている。

「う〜…もしかすると今度こそ本物の幽霊かもね?レイはどう思う?」

雅がいたずらっぽく笑って零牙を見た。

「幽霊ねぇ…」

零牙は曖昧に呟いた。仕事柄、実際に幽霊に遭遇したこともあるが、今回の噂は直接見たわけではないので判断できない。

「もうちょい詳しい話がわかればな…」

「聞いた話だと鬼のお面をつけてたらしいよ?」

ガタンッ!

「ん? どうしたんだ?リュウ」

「い、いや。な、なんでもねぇよ」

突如として後ろの席から響いた音に零牙は驚いて振り返った。

「あれ? リュウくん、もしかして怖いの?」

雅や美咲達がクスクス笑いながら、そちらへ視線を向ける。

「ば、馬鹿言え! こ、怖いわけねぇだろ! 幽霊なんか!」

若干顔を赤くしてどもりながら龍之介は反論した。

ただ、その後に発した一言は余計だったかもしれない…

「だいたい幽霊なんかよりも、むしろミユの方が…」

「私がどうかしたのかな? リュ・ウ・ク・ン!!」

龍之介の背後から伸びてきた手が、グルンとそのまま顔面に喰い込む。

「ノガッ!! い、いえ! な、何でもないですミユ様!」

そこにいたのは笑顔(目は全然笑ってない)で長い黒髪を怒りのオーラで翻した、隣のクラス―五組の白石美雪である。

ちなみに彼女は自他(美雪本人とご両親)共に認める龍之介の許嫁であったりする。

ついでに言うと龍之介本人は決して認めようとしていないが…

「フ〜ン…そっ!」

龍之介の頭に極められたアイアンクローが万力のように締められていく。

「ギャァァッ!! ちょっ、ミユ! 割れる! 頭割れるから!」

ギャアギャアといつも通りの痴話げんかを見ながら零牙は一つ溜息をついた。

「不審者騒動ねえ…(しかも幽霊の噂付きか…面倒なことにならなきゃいいが…)」

零牙の願いは残念ながら叶わぬ事となる。

無慈悲に響いた地獄からの呼び出し音によって…

※ちなみにこの後、学年美少女四天王を侍らせていた零牙と龍之介にFFF団の嫉妬の魔の手が襲いかかるのであった。
琥珀「コラボ第二話目です!」

昌・零「………」

琥珀「え〜…主人公二人が無言ですが、言いたいことはよくわかります。まずは言わせて下さい。ごめんなさい<(_ _)>」

昌彰「いくらなんでもこれは無いだろう!?話の中で俺たちが一切絡んでない!」

零牙「コラボというより別物の話を二つ並べただけじゃないですか!?」

琥珀「自分でもそう思うよ!でも前振りは結構重要な…」

昌彰「だとしても限度があるだろうが!だいたいなんでわざわざ『レンタルマギカ』まで引っ張ってくる!?」

琥珀「コラボの決着で使う術式の元ネタがレンタルマギカにあるんだよ…零牙くんはルーン魔術も使えるらしいからさ」

零牙「確かにステイルのを見てましたから使えますけど…」

昌彰「だとしてもここまで書く必要あったのか?」

琥珀「…実はこれでも削った方…下手したら模擬戦させるっていうプロットもあったから。具体的には昌彰&ゆらVS猫屋敷さん&みかんちゃんのタッグマッチとか、アディリシアさんのソロモンの魔神VS昌彰の十二神将&ゆらの式神とか」

零牙「コラボの主眼がどっか行ってる…」

琥珀「だから自重したんだよ。一応ダイダラボッチの封印術式については書きたかったんだけどね…」

昌彰「ここで言っておけばいいだろう」

琥珀「…そうしようかな…。えっとダイダラボッチの封印は布留部市の龍“アストラル”の封印を応用した術式で、ルーンによる知覚遮断、四神相応、ストーンサークル、神道による浮世絵町の土地神様たちの協力によって封印を施しています」

昌彰「しかしなんで封印した?奴良組に加えてしまえばよかったんじゃ?」

琥珀「あまりオリジナルを加えるとパワーバランスが崩れるからね…。設定ではダイダラボッチはとても古い妖怪だから組の概念とかができる前に眠りについていて、枠組みに組み込むことができないということで一つよろしく」

昌彰「まあ読者の皆様が納得してくれるかが問題だが…」

琥珀「まあコラボだから!」

昌彰「それで押し通す気か!?」

琥珀「もし読者の方から要望があれば番外編として書く可能性はある…」

昌彰「書くのか!?」

琥珀「あくまで要望があればね」

零牙「ところでいつになったらこっち(不知木町)に来るんですか?」

琥珀「ん〜…っと次の次くらい?」

昌彰「大丈夫なのか?」

琥珀「ストック分があまりない…という現実…」

零牙「頑張ってくださいよ?」

琥珀「はい、それはもちろん」

昌彰「それでは読者の皆様」

零牙「また次回お会いしましょう!」

琥珀「台詞とられた!?」


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