贖罪〜壱〜 斥候も、まさか旅路を逆に辿って居るとは思わずに、油断をしていた。 予想だにしなかった場所に初姫(紗依)一行が居て、気配を消すことすら出来ずに、斬られた。 「一刀斎さん、殺さないで」 紗依は叫ぶ。 「ふん、お優しい事だ。自分の命より他者の命が大事と申すか」 とどめを刺そうとしていた一刀斎が鼻で笑う。 「違います。発見したときに死んでいれば先を急いで私達を追ってくるでしょう。でも息があれば助けるために時間を割くはず。その方が追っ手が減ると思うから」 冷静に、状況を判断する。相手は忍なのだから、負傷者を手当てするために時間を割くかどうかは賭だ。 [前へ][次へ] [戻る] |