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お菓子作り同盟


中3のバレンタインも終わってもう高等部への推薦が決まっているあたしは、あとはぶっちゃけ遊ぶだけ。世間はここから始まる受験シーズン。

そんな空気が張り詰める中、あたしとテニス部の丸井は違った。


「今日はお前の番だぜ!みょうじ!」


あいつのいるテニス部は夏に試合で全国大会まで進んで決勝までいったんだけど、東京の青春学園とかいう恥ずかしい名前の学校に後少しで負けた。

新学期入ったときはみんな死んだようなかんじだったけど、今はもう元通りかな。


「みょうじ?」

「あ、うん、ちゃんと持ってきたよー」

「今日はなんだよぃ?」

「なまえちゃん特製バナナマフィンでーす!」

「おー!」

「キレイに出来たでしょー」

「うまそーだぜ」

「えへへー」


丸井は大のお菓子好きで、あたしは元調理部。よく家でもお菓子を作っていたから交換しようぜってことで、こうして定期的につくってあげてるんだ。


「食っていいか?」

「もちろん!たべてたべて!」


もぐもぐ


「……どう?」

「うんっめー!」

「よかったー、まずかったらどうしようかと思った」

「とか言いながらお前今まで失敗したことねーじゃん!」

「それは丸井もじゃん?」

「まぁな。やっぱ、」

「「天才的?」」

「……」

「……プッ」

「なんだよぃ!笑うな!」

「だって、おんなじ事考えてるんだもん!」

「これ俺の決めゼリフ!」

「ごめんごめん」


やはり丸井はお子ちゃまというか何と言うか。からかいやすいよね。


「まっるいせんぱーい!」

「げ、赤也」

「後輩?」

「そ、テニス部のな。生意気な二年生」

「ひどいっス!」

「あ、マフィン食べてく?」

「いいんすか!?」

「ダメ」

「なんでっすか、丸井先輩!」

「これは、俺の」


丸井は腕の中にあたしのマフィンを抱きしめて後輩くんに背を向けている。
……かわいいじゃねぇか畜生。


「ひとつくらいくださいよ〜!」

「もー丸井、また焼いてあげるから。あげなよ」

「……約束だかんな」

「うん」

「ほらよ」

「ありがとうございまっす!えーと…」

「こいつ、みょうじなまえ」


丸井があたしを親指で指しながら無事マフィンを貰えた後輩くんに他己紹介した。


「俺、切原赤也っす」

「切原くんね、みょうじです」

「……先輩のカノジョさん?」

「「ちがうちがう」」





(お菓子作り同盟なの)
(じゃあいつも食べてる菓子は)
(うん、あたしのだよ)





090405



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あきゅろす。
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