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ライバルは最強のパートナー


キーンコーン
カーンコーン


ガタッ


「跡部どこ行くん?授業始まるで」

「生徒会室に忘れ物だ」

「…そか。ならノート取っとくわ」

「悪いな」




本当は『生徒会室に忘れ物』なんてない。授業をサボるという隠語だ。
このことはテニス部と生徒会役員しか知らない秘密。



カツンカツン
ガチャ



「…はぁ……」


久々に屋上に来た。
上を見上げると雲ひとつない青い空がやけに近く感じる。



ドサッ



俺は日影になっているタンクの裏に半分倒れ込むようにして座った。


昨日は夜遅くまで社交パーティーに出ていたせいか寝不足もあって身体がだるい。


まだこの歳でそんなものに参加するなんて、と思うかもしれないが俺達の世界じゃ当たり前だ。



カツンカツン



階段を上がってくる音がする。誰か来るのか…?
今は授業中のはず…


ガチャッ



「お、先客か…て、跡部じゃん」

「…みょうじか」

「天下の跡部様が授業サボって屋上にいていいのかよ?」

「…はっ、お前こそいいのか?みょうじグループの次期当主なんだろう?」

「……うるさいよ」

「…………」

「隣…いいか?」

「ああ」



みょうじなまえ。
みょうじグループの次期当主といわれている女だ。
みょうじグループは跡部財閥と1、2を争う企業で実績もある。油断できない敵だ。



「…昨日のパーティ、跡部も来てたんだろ?」

「…お前もか」

「うん、父様の付き添いって名目の次期当主お披露目会」

「そうだったのか」

「うん」

「生憎俺のところには来なかったようだが?」

「はは、当たり前だよ。ライバル社だもん」

「普通は敵から先に回ってくんじゃねぇの」

「さぁどうだろ」



風が優しく頬を撫でる。
みょうじの長い髪がなびいた。



「でも可笑しいよね」

「何がだ?」


みょうじは困ったような笑みを浮かべている。


「だって昨日はお互い敵会社の跡取り面だったのに、今日は同じ学校行って同じ制服来て、今こうして一緒に授業サボってる。考えてることは一緒」

「…………」

「こんなことしてるって父様が知ったらきっとお叱りになるんだろうな」

「…………」

「跡部…?」

「…たまには、いいんじゃねぇか?」

「え?」



みょうじの自嘲するかのような言葉に何か言いたくなった。



「親の監視下じゃない場所で、自分の意志でこうしたいってのがあるんなら、たとえそれが敵と被ったところで構わねぇだろ」



そうだ。
だから俺はテニスを始めたんだ。
業界以外の奴らに"跡部景吾"の名を知って欲しくて、認めてもらいたくて。



「ある意味で俺達は同じ境遇の仲間なのかもしれねぇな」

「跡部…」



キーンコーン
カーンコーン



「さて、授業も終わったことだし。戻るか」

「うん!」










(跡部!)
(あーん?)
(ありがとな!)
(……はっ。貸し1な)
(えぇ!?)







090713


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あきゅろす。
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