すべてはあなたが好きだから
ずばりぶっちゃけます。
あたし、幸村が好きです。
「ねぇなまえ、お茶買ってきて」
「は?」
「は?」
「……なに」
「生茶」
「わかった」
乙女の心を暴露した後に清々しいほどの圧力をかける愛しの幸村……いや幸村様。
今日も華麗にあたしに命令します。
さっきみたいにお茶買うぐらいならまだいいほう。
いつかは真田の帽子を盗ってこい、だとかブン太のガムを眠気覚ましの辛いやつに入れ替えてこい、とか。
陰湿なことを命じるときもあったなぁ……ははは。
チャリン
(…生茶)
ピッ
1番最初にものを買いに行けって言われたとき、あたしは自分の財布持ってこうとした。
そしたら幸村は「これで買ってきて」って500円をあたしに渡したっけ。
当然あたしが奢る(?)ものだと思ってたからすごく驚いたのを覚えている。
それと同時に案外優しいじゃん、てなって好きになったんだけども。
「ただいまー」
「遅いよ」
「並んでたの」
「ふーん」
好きって自覚してからは命令が前ほど嫌じゃなくなったし、むしろあたしを信頼してるんだ、て思うようにした。
(思わなきゃやってけないってのもあるけどね)
パキッ
「ねぇなまえ、」
「なに」
「今日までパシリありがとう」
「…え、」
あたしが買ってきた生茶を優雅に口に含みながら幸村様は、さっきまで幸せ絶頂のあたしを絶望の底へと突き落とした。
日常と化した幸せをなくしてあたしは明日からどうすればいいの?他に頼む子がいるの?
……あたしは必要ないの?
そんな言葉で頭の中がぐるぐるしているのがわかる。……だめだ、泣きそう…
混乱してるあたしの頭に幸村様の涼しい優しい声が響く。
「ちなみに明日からは彼女に昇格ね」
「…え、」
「あ、ちなみに拒否権なんかないよ」
すべてはあなたが好きだから
………嬉しいんだか悲しいんだか…
(普通好きな人パシらせる?)
(ほら俺独占欲強いから)
(…関係なくない?)
(なまえ)
(ん?)
(好きだよ)
(……ばか)
090616
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