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飛行機雲


部長に突然呼び出されるのは今日が初めてではない。
唯我独尊の典型のような人だから、むしろ事前に連絡がある方が珍しいくらいだ。
しかし、いくら自分は引退して暇だからといって部活中にそう簡単に呼び出されてはこっちはたまったもんじゃない。
これからは俺たちが頑張っていかねばならないのだから。
今日こそはバシッと言わねばと、気合をいれて呼び出された屋上へと向かう。


放課後の校舎とはいえ、教室に残っている人はいる。
人の気配や話し声は絶えない。
しかし、屋上へと続く階段が近づいてくると、教室も大分遠のきそれも次第に感じなくなる。
静かな廊下に自分の足音がやけに響く。
屋上へと続くこの道階段を初めて上ったのは部長と付き合いだしてからだ。
あの人は何かとこの場所を好む。
前に理由を尋ねたら、ココが一番高いからだ。とあっさりと答えをよこした。
常に高みを目指すその姿勢があの人の一番の魅力だと俺は思う。
一番共感できる部分だと。
あの人は、まるで空に手が届くとでも信じているかのように常に上だけを見てるのだ。
その姿は眩しく、いつか俺を置いてこの地から足を離してしまいそうで、羨ましく、そして恨めしく思った事も一度ではない。



ガチャっと、屋上の扉を開ける。
眼前には青空が広がるばかりで部長の姿は見当たらない。
不思議に思い辺りを見渡すと、予想外にも部長の声は真上から聞こえてきた。
勢いよく振り返ると、ドアがあることによって出来ている高台の上にいつもの不遜な態度の部長が居た。
いつまでも呆然と上を見上げている俺を不思議に思ったのか、部長が眉間に皺をよせ、どうかしたのか?と訊いてくる。

本当に俺を置いて行ってしまったのかと思った。

そう思ったなんて言えるわけもなく、少し驚いただけです。無難な言葉を選ぶ。
部長は、納得したのかしていないのか微妙な表情のまま、とりあえず上がって来いと俺を促した。




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