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クレハテルツレヅレ
末姫と北の方16

部屋の外には出てみたものの、外は冷えるし、満仲は泣き止まぬしで、経基は途方に暮れるのである。

当然、部屋の亜美の耳にも満仲の泣き声は届く訳で、亜美が心配そうに声を掛けてくる。

なれど、ここで引き返しては元の木阿弥、男も廃ると言うもの。
経基は亜美に向かい、案ずるなと一言言うと廊下を歩き始めたのである。

何処に何があるなど分からぬし、他人の屋敷である。あまり好き勝手する訳にも行かぬ。

取り敢えずは、満仲を泣き止まさせねばと、経基は眉間に皺を寄せるのである。
抱いてみても、高く掲げてみても泣き止まず、遂には普段は絶対にせぬ様な、顔を思い切り引っ張り、歪め、面白いと思われる顔をしてみたのだが……。

「うぇぇぇん!」

まるで効果がなかったのである。

些か傷付きながら、深く息を吐き経基は勘弁してくれぬかと呟いた。

よもや、何処か具合でも悪いのではと訝しむ頃。

絹を裂く様な悲鳴が、廊下の先から響いたのである。

剣は常に帯びている。腰の剣を撫でると経基の顔は、すっ…と引き締まったものとなる。
満仲を見て、主も男じゃ共を致せと呟き、抱き直すと脱兎の如く悲鳴の方へと駆けたのであった。






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