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クレハテルツレヅレ
末姫と北の方15

「でわ、行って参ります……」

月が戸をしずしずと閉め、部屋には三人だけが残されたのである。

静寂。

満仲は乳を飲み、安らかな寝息を立てている。

その様子を見ていると、熱に浮かされた身であれど、亜美の心は安らぐのである。

零れ落ちる微笑みは、普段きつめな顔をしているだけに、増して優しく見え、様子を窺っていた経基はつい顔を赤らめ目を逸らすのである。

落ち着き一息。白湯を含む。

経基の頭に浮かぶは此度の失態であり、将門の行為である。

都に帰りて、謗られのは免れぬ事であろう……。
されど、将門の謀反の報せを持ち帰れば、失態は幾何かは薄れるのではないであろうか?

ならば、皆には悪いが明日の朝には此処を起たねばならぬと経基は思案を巡らしたのである。

「う……う……うわああん!」

経基の思案を断ち切ったのは満仲の泣き声である。

腹は満腹であろうし、今の今まで、落ち着き眠っていたのにと亜美は起き上がろうとする。
そんな亜美を経基は止め、まだ横になっている様に言うのである。
そして、満仲を慣れぬ手つきで抱く。

「まぁ! 経基様が!」

その様子を見て、亜美ははらはらするやら、可笑しいやらで寝転んではいられないのであった。

そんな亜美の様子に経基は顔をしかめ、癪に障ると苦笑を浮かべると、満仲が寒くない様にと更に布を巻き、部屋から出るのであった。




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あきゅろす。
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