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クレハテルツレヅレ
管弦の宴12

そんな先のやり取りの末の鴨川の向こう岸の家である。

「はぁ……」

紅葉の口から溜め息が漏れる。

二条から根気良く歩いているのだが……遠いのである。
羅生門を抜け、鴨川があるのだ。つまり、此処は都であれど都に非ず…。都の外である。

それに……と紅葉が辺りに目をやれば、岸に建つ小屋はどれも今にも倒れそうな物ばかり。また、住まう人の着物もかなりくたくたである。

都は煌びやかであった。人が溢れ活気があり、様々な店もある。

されど、帝のおわす北の大内裏から離れ、都の中央を貫く朱雀通りを離れ、右京を東に行けば行くだけ、活気は薄れ、人の顔から精気が消えて行くのであった。

更に鴨川は魚を捕ったり、水を掬ったりと人々の生活の基盤の一つであったが、流れが強く、時に運のない者、儘ならぬ道へと踏み行った者共が河の流れに飲まれる事も多かった。

わっと鴨川の岸で、人が集り騒ぎ、検非遺使が紅葉の脇を駆けて行く。
また人が上がったのだろう。

煌びやかな都の影……。

それを目の当たりにし、紅葉はまた溜め息を吐くのである。





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