クレハテルツレヅレ 呉葉4 「あの方も、家の二の姫と婚姻すれば幸せだったろうに……」 「姫様……」 雪乃の自虐的な呟きに、呉葉は頭を垂れた。 最近では妙な噂も出ており、実は呉葉はこの家の二の姫…つまり次女だと言うのである。 そこまで言われる呉葉のあまりの美しさと、自身の有り様を雪乃は憂いているのだ。 日に日に増える求愛の歌と品。それが、段々と自分を大好きな姫から遠くしていく……。 呉葉にはそう思えてならなかった。 改めて、茶を用意しようと呉葉は部屋を後にし廊下を歩んでいると、前から使用人が早足で歩いて来るのに気づいた。 「呉葉さん。婿殿が来られたと姫様に…」 それを聞き、呉葉は急いで部屋へと踵を返す。 顔が綻ぶ…。 婿殿が見舞いに来てくれた。これで姫様の気も少しは晴れてくれるに違いないと…。 案の定、顔を赤らめ喜ぶ雪乃を見て、呉葉は胸をなで下ろし、しっかりと支度を整えてやるのだった。 呉葉は……雪乃の事を本当の姉の様に慕っているのである……。 とても……とても……大切に思っていたのだった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |