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クレハテルツレヅレ
魔性9

「な、なにを……?」

竹男が膝から顔を上げた。
されど、見上げてもやはり逆光で、鈴音の顔は見えなかった。

「あの雪乃のお陰で、竹男様はいらぬ苦労をされているのです」
「そ……そんなことは…」
「いえ。されております。雪乃の病。あの無礼な振る舞いなんと醜い事でありましょう?
竹男様の後朝の歌……。あれすらも、届かぬ。あの沙汰は正に狂人に御座います」
「ち、ちが……」
「違いませぬ」

ぴしゃりと鈴音が即座に遮る。

「雪乃は狂人に御座います。もう、竹男様の言葉は届きませぬ。
竹男様も、もう愛想を尽きかけて、否。尽かされておられるはずに御座います。
後朝の歌。あれはあなた様の真心に御座います。それをあの狂人は握り潰し、引き裂き、投げ棄てたので御座います。あなた様は棄てられたので御座います。
格下の家の、狂人の、愚かな醜女!
あぁ……おいたわしや、竹男様。なんとお可愛いそうな事で御座いましょう……。
それに……妻を取られたと言うのに、男女の交合いも知らず、同世代や上の方々とお会いになる度にからかわれておられましたな?
誰が悪いので御座いましょう……。誰が…。
のぅ……竹男様。
誰が悪いので御座いますか…?」

鈴音の言葉に、竹男は直ぐには答えられないでいた。

されど、鈴音は何度も何度も何度も何度も何度も何度も、竹男に聞くのである。

「竹男様……誰が悪いので御座いますか?」




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あきゅろす。
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