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クレハテルツレヅレ
紅い葉の様な手…5

二人の後を必死に追いかけ、ついて行く中。

ふと……。

父と母は、酷く怒っているのではないかと呉葉は思い至る。

辺りには何もなく平野、夜も明け切らぬ闇の中。
呉葉の歩みが止まる。

歩み続ける二人の背を見つめながら、怒るのも無理もない…と呉葉は溜息を吐いた。

長年奉公してきたお家と主人。
呉葉も産まれて因りずっと仕え、恩を与えられて来た。当然敬愛している。
だが、父と母は更に長年仕えて来た。また、聞けば昔。行く当てのない二人を拾ってくれたのも、あのお家だったらしいのだ。
二人の、お家と主人に対しての想いは、娘のものなど比べものにならぬ程大きいに違いなかった。

そんな大切なお家に対し、娘は不義理を働き、その煽りで無情にも自分達まで追われてしまったのである。
父と母の落胆は凄まじいに違いない。私を怒るのも仕方ない。いや、怨んでいるのやもと……呉葉は、己を責め、遂に涙が堰を切り溢れ出した。

「呉葉……」

気付けば笹丸が、目の前にいた。

「父様! すみません!」

呉葉はその場に膝を付き、地面へと平伏し謝罪した。

「呉葉……」

己が悪い。父と母にすまぬと己を責め泣き震える呉葉。



そんな娘の肩へ……。



笹丸はそっと……。
優しく手を置くのだった。




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あきゅろす。
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