クレハテルツレヅレ 呉葉18 「姉様……そんなに、ご自分をお責めにならないで……」 雪乃を憐れむ涙が頬を伝い、呉葉の手から懐剣が滑り落ちる。 幻影が消え、呉葉は現へと立ち返った。 「呉葉ぁぁぁ……!」 「姉様……」 鬼の如く顔を歪ませ、凄む雪乃。 呉葉は力を奮い、足に動け!立て!と命じ、壁に背を預け立ち上がった。 「お姉様……私は……お姉様から何も……っ…」 何も奪いませぬと言いたかった。 されど、腰からの不浄の痛み……。それが……雪乃への裏切り、これからも苦しめる枷になるのではないか? 何も言えぬ……。 私はお姉様の大切な人を奪ってしまった……。 呉葉は頭を垂れ、うなだれるしかなかった…。 「呉葉ぁっ!」 雪乃の腕が呉葉の喉へと伸ばされ、掴み上げる。 息のできぬ苦しみが呉葉を襲うが、呉葉には既に抗う気力が失せていた。 寧ろ……。 このまま絞め殺して欲しいと……。 呉葉は願うのだった。 「姉様……すみ…ま……せ……ぬ………」 鈴……。 鈴の音である。 その音に、呉葉の目は無意識に探した。 鈴……。 雪乃の手首に紫の鈴。 それはあの男と同じ物であった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |