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クレハテルツレヅレ
呉葉14

雪乃は既に床に就いている時刻であったし、酒の臭いを強くする婿殿を、そのまま大切な姫様の部屋へ通す事ははばかられた。
かと言って追い返す事など出来るはずもなく、使用人達は、婿の部屋の用意を始めた。

そして、用意が整い、灯りで前を照らしながら案内するのは、雪乃の世話役である呉葉が案内する事になった。

寝屋に着いた途端である。

「きゃ……」

呉葉は背後から、のし掛かられたまらず、寝糸へと倒れ込んだ。

「む、婿殿……ぐっ!?」

驚き、振り向こうとした呉葉の口に、手が力任せに押し付けられる。
たまらず仰け反る呉葉の首筋間近に掛かる、酒の臭いのする荒い息。

「良い……香りじゃ……呉葉ぁ…」
「むーーっ! ぷはっ…む、婿殿!」

元々線の細い男である。一瞬手の力が弱まったのを察し、呉葉は首を振り、振り払う……。

されど……。

「お戯れを……んっ…んんんぅぅっ……!?」
「っ……ぷはっ……和らかい…女子の唇とはかように和らかいものなのじゃなぁ…く…くくくく……しかも、あの呉葉の唇じゃあ!」

それは…呉葉に取って、初めての接吻だった……。




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