クレハテルツレヅレ 呉葉11 呉葉が笹丸に話があると言われたのは、笹丸が主人に呼び出され、幾日か過ぎた頃であった。 「お父様? 一体…お話とは?」 笹丸に呼び出され、どれ程時がたったであろう。 俯いたまま、なかなか話を切り出さぬ笹丸に呉葉は痺れを切らし、己から用向きを尋ねた。 「うぅむ……。実はな……」 「…………」 漸く口を開いた笹丸から告げられた言葉に、呉葉は足下が崩れ、目の前が暗くなる様に感じた。 「わ、私を養子……!? それに……結婚など……、姫様のお世話は……!?」 「呉葉。……今のままでは、姫様にも迷惑が掛かるのは……分かるな? それに……これはお家のためでもある……」 「ですが……私は……」 笹丸の顔に浮かんでいるのは苦悩。父も非道く悩んでいるのを呉葉は見てとった……。 しかし……納得は出来ない。 「お父様……私は……」 その時。部屋の戸がすっ……と開き、菊世が入って来た。 笹丸が不満気な視線に菊世は婿殿が来たのだと告げた。 「それに大分お酒を召されている様で……」 それを聞き、二人は急いで立ち上がり、忙しく動き始めた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |