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クレハテルツレヅレ
空腹の魔王
第六天。

在るのはねとりとした闇である。
その闇は…そう。例えば、総ての色をぐちゃぐちゃにかき混ぜて、兎に角兎に角どんどんと注ぎ足して、更に混ぜ合わせて漸く出来る。そんな色をした闇だった。
そして、色は……喜び、悲しみ、嫉み、妬み、怒りと言ったありとあらゆる感情。更には、食欲、色欲、情欲、物欲……などと言ったありとあらゆる欲望から抽出されたものであった。

その闇の中。
魔王と呼ばれる意志は、酒の肴の魂が切れそうな事に気が付いた。

魂は旨い。
過ごした生に依って千差万別の味になり、滋養もある。

中でも、魔王は、悲しみや無念、悔恨に彩られた魂が大好物であった。

その魂を肴に呑む、血の池地獄から仕入れた極上の酒の旨さと言ったらなかった。

その肴である魂が残り僅かなのだ。

また選りすぐって来なければならぬと思案していた処。
丁度人の世からの願いが届いた。
その願いは……子が欲しいと言うものだった。
つまらぬ願いだと、むげにしようとしたのだが、魔王は思い止まった。

偶には己で、旨い肴の下拵えをしてみようと……。

魔王は願いを聞き入れ、願い上げた夫婦は子を儲けたのだった…。



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