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beautiful * bird


とりあえず、なんかのマンガの中とかいう非現実的なことではないようだった。
いかにもファンタジーな異世界、というわけでもない。
あまりにもリアルであるし、実はこういうことは前例があるらしい。(この世界限定かもしれないが)
ただ、本当の自分はこの世界に存在していない。
そして、この体の持ち主もわからないらしい。
何でもゴミ捨て場でボロボロになった状態で倒れていたらしく、捜索願も出されていないというのだ。
目が覚めた後、散々検査されたが(脳波とか色々)、異常はなかったらしくすぐに退院できるらしい。
そこで、問題が発生。
お家がありません!!!!
さすがに五歳では自活は出来ない(まず働けない)

「ゆうき君、うちに来ないかい?」

「え?」

「ゆうきちゃんなら大歓迎よ!」

そう言ってくれたのは、ゴミ捨て場での第一発見者の美鳥義貴さんとその奥さんの夕子さん。
二人ともまだ若いのだが、夕子さんのほうが子供が出来にくい体質らしく元々養子を取ろうと思っていたらしい。

「え、でも…」

「ゆうきちゃんの事情は藤崎先生から聞いてるわ。それでも私達はあなたがいいの。」

優しそうなお医者さんは藤崎義雅先生といって一応、主治医らしい。ついでに義貴さんのお兄さんだという。
夕子さんはおっとりとした雰囲気なのだが、かなりの情熱家らしい。(なんたって実は駆け落ち結婚らしいのだ)真っ直ぐとユウキを見つめる視線はどこまでも優しい。
真っ直ぐな愛情。
ソレを向けられるのはどこか気恥ずかしく感じる。
ユウキは向こうでも天涯孤独で自活生活をしていた。両親はユウキが小学生のときに飛行機事故で亡くなり、その後は祖母に育ててもらったのだが、その祖母も高校に入ったばかりの去年、心筋梗塞で亡くなっていた。

「私の実家は武道の道場をしていてね、元々父のお弟子さん達がたくさんいるし、私達もそこに住んでいるんだよ。だから何にも遠慮する必要なんて無いんだよ?」

そう言って穏やかに微笑む義貴さん。

「ね、ゆうきちゃん。私達、あなたの家族になりたいの」

二人はとても温かくて、少し泣いた。


そして、ユウキは『美鳥夕貴』になった。




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