beautiful * bird
異変*1
可もなく不可もない、ただ平凡で穏やかな毎日。
これといった不満も無かったし、これからもずっとそんな毎日が続いていくのだと思っていた。
「ユウキってホント男前だよねー」
隣を歩く少女が、そこらの男より男らしいよ、としみじみと呟く。
「そっかなぁ…?」
わかっていないユウキに呆れてため息をついた。
「この前階段から落ちそうになってた娘助けたんでしょ?」
「え、普通助けるじゃん。」
危ないっと思ったらとっさに体が動いたのだ。
「高いとこの物取ってあげたりさぁ。また痴漢撃退したとか聞いたけど?」
「私のほうが背が高いし、痴漢なんて許せないじゃんか。痴漢ほっといたらマナミだって危ないんだよ?」
隣を歩く少女はそんじょそこらのモデルなんて相手にならないくらいの容姿をしている。そんなマナミに近づく変質者やら痴漢やらナンパ野郎やらをことごとく退けてきたのはユウキだったりする。
「普通、17の小娘がやることじゃないでしょうが!!」
どこの紳士よ!と突っ込まれるが、ユウキにとって当たり前の事をしているだけなのでいたって「普通」のことをしているつもりなのである。
「そっかなぁ?」
首をかしげるユウキだが、実は今現在も学校帰りのマナミを家まで送り届けている途中だったりするのだ。
「まぁた、ユウキのファン増えたらしいし、学校で一番女子にモテてんのユウキだよ?うちの高校、共学なのにっ!!新聞部のアンケート調査ブッちぎりの一位だったからね、アンタ。なのに自覚ないし…我が幼馴染ながら、末恐ろしいよ…」
ぶつぶつと呟きだしたマナミに苦笑する。そういうマナミも自分の類稀な美貌を自覚してないのだから。
ちょうど橋の真中に差し掛かった時だった。
背後から車のクラクションが鳴り響く。
とっさに振り返ったユウキの目の前に映ったのはマナミに突っ込んでこようとするトラック。
間に合わない!
「マナミっ!!!!」
マナミをドンッと思いっきり突き飛ばす。
「!!」
耳障りなブレーキ音と焼けたゴムの匂い。
それを認識したと同時にユウキの体に衝撃が走る。
弾き飛ばされたユウキの体が欄干を越え、10メートル以上下の水面へと落ちていく。
「ユウキ――――――――――っ!!!!」
マナミの悲鳴が聞こえた気がした。
水面に叩きつけられた衝撃で意識がホワイトアウトしていく。
走馬灯は、めぐらなかった。
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