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beautiful * bird
3

「居候?」

夕子さんに居間に案内され、出されたお茶を啜る。

夕貴は何も聞いてないらしい。

「ああ。親父がドイツに行くことになってな。三年は戻らないらしいから、ここにお世話になることになったんだよ。」

「へぇ。じゃあ、高校は?」

「こっちの高校に転入することになってる。ここは志望大も近いしな。」

夕貴が両手で湯呑みを握っているのが可愛らしい。
その小さな手では湯呑みを持ち上げるのも大変なのだろう。

「ふ〜ん。マサタカも藤崎先生みたいに医者を目指してんの?」

「まぁな。お前は?何になりたいとかねぇの?」

「んー。働きたいとは思うけど、このナリじゃなぁ。」

夕貴は肩をすくめる。
その仕草と小さな体がアンバランスで違和感が拭えない。

「小学校行かねーの?」

「あほか。コナン君じゃあるまいし。」

「っぷは!違いねぇー!!見た目は子供、頭脳は大人な!」

そういう意味じゃコナン君を尊敬するよ。17にもなってもう一度、いちたすいちはー?とかひらがなの練習だぜ?
耐えられねぇー、と顔を盛大にしかめる夕貴。

初めて会ったというのに話が尽きない。結構気が合うみたいだと雅隆は少し安心した。

「お菓子持ってきたわよー」

夕子はにこにこしながら菓子が盛られた器をちゃぶ台に載せる。

雅隆ははっとして鞄をあさる。

「あ、そうそう。これ、親父からの手紙です。」

雅隆が手にもっていた鞄から取り出したのは、先程門の前で見つめていた手紙とは別の手紙の束である。

「あら、重蔵さん宛てと政子さん宛てに私宛もあるわ〜」

夕子の手に乗っているのは手紙が五通。

「親父から話があったとは思いますが、今日からここにお世話になります。よろしくお願いします。」

雅隆はそう言って夕子に頭を下げる。

「あらあら、ご丁寧に!私達は家族が増えたようで嬉しいのよ。気にしないで寛いで頂戴ね」

夕貴ちゃんとも仲が良いみたいで嬉しいわーと少女のように可憐に笑う夕子さん。

「母様、マサタカの部屋はどうなるの?」

「そうねー…客間も空いてるし、お弟子さんのお部屋も一つ空きがあるわねぇ、あ!夕貴ちゃんの隣にも空き部屋があったわね!雅隆君はどこがいいかしら?」

「え、オレはどこでも構いませんけど」

それを聞いて夕貴が口を挟む。

「なら、マサタカ、隣来いよ。」

「いいのか?」

驚いて問い返す。
一応、中身は同い年の女の子なのに。

「ああ。お前とは話が合うし、楽しいからな!」

「わ、わかった。そうするよ。」

ユウキの満面の笑みに頬が熱くなるのを感じた。

(か、かわいい…っ!!)

平凡顔のはずなのに、夕貴の笑顔がめちゃくちゃ可愛くみえるのはなぜだ!?

子供だからだ、小動物っぽくて可愛いし、そんな感じだろう。雅隆は半ば無理やり自分を納得させた。


その後、強烈なお爺様とお婆様に歓迎(という名の扱きを受け)され、義貴からは夕貴に関してそれとなく釘をさされたり…。

とにかくその日から、雅隆も美鳥家の一員となったのだった。



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