beautiful * bird
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枝の上で身動きも出来ずに固まっていると、近くからざぶりと水音が聞こえた。
はっと目を戻すと湖にいた人物がこちらに近づいてくる。
正面から見たその人物の姿にユウキは息を呑んだ。
吸い込まれるようなきらきらとした紅。
その人物は、透き通った水晶を夕焼けにかざしたような真紅の瞳をしていた。
白い髪と赤い瞳の強烈なコントラストに負けないくらいに美しく整った造作。
宝石のような赤い瞳を縁取る睫毛は銀色の扇のようだ。
白く滑らかな肌には染み一つなく、すうっと通った鼻梁や薄い花びらのような唇、全てのパーツが計算しつくされたように少しの狂いもなく小作りな顔の中に完璧な位置、角度、大きさで配されている。
まるでビスクドールのような完璧なまでに整った顔。
ザンバラに切られた髪すら計算しつくされたものに感じる。
赤と白の現実を忘れさせるような美しさは恐ろしいくらいだ。
ユウキはどこかで聞いた話を思い出していた。
この世のものとは思えないような美しい容姿で人を引き寄せて喰らう魔物。
人はその美貌に酔って喰らわれることすら忘れてしまう。
その魔物はこんな容姿をしているに違いない。
見目麗しい、それこそハリウッド映画に出演するような人物を見慣れているユウキだからこそ見とれるくらいですんだが、耐性のない一般人ならば魂を抜かれたように惚けてしまうだろう。
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