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beautiful * bird
8

思考に沈んでいたユウキを引き上げるように鈴のような澄んだ音が聞こえた。

これは人の、声?

ユウキの耳にかすかに聞こえてくるのは歌うような祝詞だった。

巫女のような人物はざぶざぶとゆっくり湖の深いところへ進んでいく。

その間も澄んだ祝詞は止まらない。

なんと言っているのかこの距離でははっきりとは聞き取れない。

「…謹誓…奉る…我……し……」

ぶわりと風を感じる。

清冽な空気に肌を総毛立つ。

湖の中央でその人物は頭の頂点で結っている長い髪を白魚のような手で荒く握る。手に持った小刀を抱え上げ、結われた美しい絹糸のような白い髪を根元からざっくりと切った。

はらりと残ったザンバラな髪が風に踊る。

細い腕で恭しく髪の毛の束を沈め、何事か呟いた瞬間、湖が発光した。

溢れるような圧倒的な力。

湖の中心から吹き出るように空を貫かんばかりに光が立ち上る。

風を感じないのが不思議なくらいの凄まじい勢いで光が押し寄せてくる。

「うわっ!」

思わず目を閉じたユウキは光が収まると同時に違和感を感じ、目を見開く。

違和感。

その正体は空気だった。

生き物の気配、森の匂い、全てが恐ろしいくらいに普通なのだ。

今まで感じていた嫌な空気が全て一瞬にして消えていた。

それだけではない。

まるでずっとそうであったかのような自然な空間、それがあまりにも不自然だった。

あまりの違和感に頭の中をかき回されるようで気持ち悪い。


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