beautiful * bird
7
吐き気がこみ上げてくるようだ。
目を閉じて呼吸を落ち着ける。
気配を経つのをやめると、ざわざわぶよぶよとした身体にまとわりついていた嫌な空気が周りから少し薄れた。
足音と息を殺して湖のほうに行く。直径五十メートルほどの湖は静まり返っているのに、近づくだけで脂汗が吹き出る。
殺気にもよく似た濃密な気配が漂っている。
そっと近づくと遠くでぱしゃんと水音がした。
まさか、人がいるのだろうか?
ユウキは近くにあった背の高い樹に音も立てずに登る。
梢を避けるようにしてちょうど湖を一望できる枝に立つ。
湖の中に誰かが立っていた。
長い髪を高く結い上げ、細い肢体を純白の単衣に身を包んだ姿はまるで巫女のようだ。
後姿しか見えないが、すうっと伸びた背には何か神がかった静かな力に満ちている。
女性にしか見えないのに、よくみると骨格は男性のものにも見える。
でもそれに気づいたのはもっとあとだ。
それよりも最初に目を引いたのは、結いあげられた長い絹糸のような髪。その髪は、雪のように真っ白だったのだ。
(何だろう、どこかで……)
見たことない人物のはずなのに、どこかで見たような気がする。
白い髪のこんなにも印象的な人物を見たのなら忘れるはずないのに。
(どこで……)
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