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beautiful * bird
3

嫌な空気が絡みつくようで体が重くなるのを振り払うように走る。

生ぬるい、でも背筋が凍るような感覚が気持ち悪い。

木々の間をすり抜け、十キロくらい走っただろうか。

途中いくつもの崖や傾斜を木々の枝を伝い、飛び越えながら駆け抜けた。

高等部がある山を下っているのか。来るときに車で上ったのと反対側だろう。

ざりっと音を立てユウキは立ち止まった。

「何だ、これ…」

何十メートルもある崖の下、ユウキは見下ろした景色に驚く。

まるでくりぬかれた様な崖に囲まれ、森の中心に正五角形の大きな湖がある。

周囲に山が四つ、ユウキが下ってきた山も含めると五つの山が湖を守るかのように鎮座している。

自然に造られたとは思えない景色。

禍々しいというのが一番しっくりくるようなどろりとした

嫌な気配は湖から漂い、広がっているようだ。

崖下の森の中にある湖に近づくにはこの目もくらむような崖を降りなければならない。

「んー…、どうすっかなぁ」

棍か短槍でも持ってきてたらそのまま飛び降りれたんだけど。

崖の端を歩いて地形を確認する。ごつごつとした岩肌には多少の出っ張りもあるが植物すら生えていない。

「滑っては、無理か」

見事に抉れてる。

(と、なると……)

ユウキはさっと腕を振る。

その手の中には小型のサバイバルナイフ。

袖に隠れていた手首のホルターから一度腕を振ることでナイフを引き出したのだ。

「さーて、準備しますかね」

ユウキはナイフを閃かせた。



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あきゅろす。
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