beautiful * bird
朝 * 1
トントントンとこ気味よい音を立ててユウキはネギを小口切りにする。
「あ。たくさん切りすぎた……」
つい切りすぎるんだよなコレ。
味噌汁は沸騰する直前で火を止め、炊き上がったご飯をしゃもじで十字に切り、一粒一粒を潰さないように軽く混ぜる。
胃に負担をかけないように一応おかゆも一人分作っている。
銀次の体調不良に気づいたのは会ってすぐだ。
ユウキは経験から相手の身体を触れば大体の実力はわかる。
筋肉から考えてもっと動きはいいはずなのだ。
なのに銀次の動きは精彩を欠いていた。
間近で見た目の下の隈、顔色の悪さ、悟らせないように気をつけているのだろうが歩き方も体力的に弱っているものだった。
食堂でも殆ど食べ物に手を付けていない。冷蔵庫のみならず、共有スペースのどこにも食べ物がない上にゴミ箱まで綺麗なままだった。
生活感がなさ過ぎる部屋の様子。そして典型的なストレスの症状と、銀次の見せた涙。
憶測が確信になるには十分すぎるだろうし、間違ってないと確信している。
「よし、できあがり」
味噌汁とご飯、卵焼き、即席の浅漬けの簡素な朝ごはんだが無いよりましだろう。
朝食の準備が終わり、銀次を呼びに行く。
「ギーン!朝ごはん出来たよー!ギンギーン!ギンギギーン!ガンガンギギーン!」
ガンガンギギーン!とか言ってわかる人いるのだろうか。はともかく。
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