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(良く分からない誘われ文句)




そんな物で、良いのなら。


『あ、』


『あっ、こんばんは』


今日も疲れた飯が美味い。に期待しながら1Kの我が家に帰る曲がり角で、今日の朝仲良くなった…気がするお隣の横田さんに出会った。ちょっと疲れた顔をしているけれど、朝同様作業着にダウンを羽織っている横田さんは相変わらずにこにこと笑っている。


『今日もお疲れ様でした』


『横田さんも…』


ふと横田さんを見ると、手にはコンビニの袋にサンドイッチとおにぎりが幾つか入っているのが見えた。何となく、横田さんは自炊出来ないタイプというか、苦手なタイプだと思っていたから、予想がばっちり当たったような気がして思わず笑ってしまった。


『横田さんって自炊しないんですか』


『えっ…あ、いやっ、これは偶々…………自炊は、面倒なのでつい…あはは…』


始めは何故か隠そうとして否定していた横田さんは観念したのか、ちょっぴり顔を赤らめて、照れ笑いを浮かべる。あたしは疲れていたのか、自分の悪戯心に火が着いてしまったのか、何だかそれが無性に可愛くて、もっと見ていたいって思ってしまって…


『今時、男性も料理出来ないと、女の子寄って来ませんよー』


『うっ……や、やっぱりそうですよね…』


意外にも効果有りだったのか、横田さんはがっくりと肩を落とす。整った顔、長身、見た目クールな横田さんがそんな態度を取ると可愛い以外に言葉が出て来ない。次はどんな意地悪をしようかと一瞬考えたけれど、可哀想というか、お隣さんを弄っても仕方がないのでその思考を切断すると今度は横田さんが口を開いた。


『…今日の晩御飯は何ですか』


『へ……ああ、親がじゃがいも大量に送って来たので、取り敢えずベタに肉じゃがとか作ろうかなって、人参とか玉葱とか買って来ました』


横田さんの視線はあたしが右手に持ったスーパーの袋。別に男子に不動の人気手料理である肉じゃがで家庭的をアピールするつもりなんて毛頭もなかったけれど、肉じゃがと聞いた瞬間に横田さんの目がきらりと光ったのをあたしは見てしまったのだ。


『僕、肉じゃが大好きですっ。って言うか、嫌いな物は一つもないですよ…っ』


『は、はあ……ん、えェと…』


横田さんの良く分からない主張は、どういう事を意味しているのか。というか貴方今日の晩御飯サンドイッチとおにぎりでしょうに。そんなあたしをもどかしく感じたのか、横田さんは更に続けてもう一言。


『因みに自炊は殆どしないので調味料はダダ余りですっ』


『……』


それはつまり、交換条件とでも言いたいのだろうか、にこにこと笑う横田さんは余程肉じゃがが好きなのだろうか、


『…別に調味料は足りてるので大丈夫ですが、大量に作るので良かったらお裾分けしますよ』


『…っ、さんがそう言うなら、喜んでお裾分けされますっ』


なんて、まるであたしがお裾分けするから食べてくれと言わせたかのように持って行きたいのだろう横田さんの発言は、やっぱり可愛かったので、あたしもつられて笑ってしまったのだ。




(彼の笑顔がやっぱり眩しい)




今日はちゃんと分量計って作るのが、女子力アップでしょう

























20130102めぐ



あきゅろす。
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