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外殻大地編 第1話 −やるべき事−





「ん…、ここ、は…」


爽やかな風が頬を撫で、零は目を覚ました。
辺りを見回し、ここがどこか理解する。


「…。自由にしろって言っておきながら結局はここなのね。まぁルークとティアが来る時期なのかわからないけど…。…縁は強いか…」
「ぅ、ん…。…零ー…?ここ…」


どこ…と目をさすりながら言おうとした瑠海はハッとする。
横でもぞもぞと起きた燐もすぐに気がついた。


「ここ…タタル渓谷だよね…?」
「うん」
「ってことは…。ルークとティアが居るの?もしかして」


瑠海の言葉に零はんー…と考え込む。

確かにローレライはルーク達と自分達が縁を持っていると言っていた。
ローレライには自由にしろと言われていながらも、飛ばされた先はルークとティアが旅の始まりとなる場所。
ここまで繋がりがあるとなると、ルークとティアが居る可能性は高い。
それか、今飛ばされてくるところなのか…。
だがそんなことよりも、零は現状に少し困っているようであった。


「とりあえずまず最初の問題は…」
「?? え…;;;」
「ちょ、何!?」


零が言いながら二丁銃を構え、瑠海と燐へ向ける。
驚く2人をよそに、零は安全装置を外し、躊躇いなく撃った。
2発の銃声が、タタル渓谷に響き渡る。


「い、いきなりなんだと思ったら…!!!」
「零…一声声かけてくれたって…」
「そんなことしてる余裕なかったし?というか言ったら2人ともパニクって照準ずれて余計に危ない」


タタル渓谷に巣食うモンスターたち。
瑠海と燐の後ろで、まさにイノシシのようなモンスターが2人に襲いかかろうとしていたのだ。
それに気づいた零が2人を助けるために銃を発砲したということだ。
だが2人は気づいてなかったために心底驚いた模様。
文句を言いつつも、モンスターが居ることを思い出し、2人は困り果てる。


「ど、どうしよう…私傷を治すことは出来るけど攻撃なんて…」
「燐だって何にも武器持ってないよー!ていうか零はなんで銃なんて持ってるのさー!!」


元の世界でなら銃刀法違反で捕まってるよー!と恨めしそうに言う燐を、零は聞き流す。
そして再び集まってきたモンスターたちに、どうしたものかと考えた。


(1人ならいけるけど、瑠海と燐を守りながらはさすがにきつい…)


いくら銃の使い手といえど、一対多では他人を守りながら、などさすがに無理だ。
仕方がない、とすばやく安全装置を外し、再び銃を発砲。
突然のことにきゃっ…と驚いた瑠海と燐だったが、すぐに走れと零に言われて全速力で走った。


「ちょ…なんで逃げなくちゃいけないの!?零が全部倒してよ!」
「あのね…;さすがに2人を守りながらは無理デス」
「ご、ごめん、足手まといで…;;」


走りながら会話をする3人。
しゅん、と落ち込みがちに呟いた瑠海に、零は首を振る。


「瑠海は傷を癒すことが出来るでしょ?むしろ何も無い燐が足手まとい」
「なんだとおおおお!!!」


きっぱりと言い切った零の言葉に燐が不機嫌そうに叫ぶ。
確かに、燐は武器も持ってなければ何か使えるわけでもない。
ローレライによって本来こちらで生まれるはずだった存在。
何か、何か力がないと納得がいかない!と思った燐は、追いかけてくる敵に対して向き合い、急に立ち止まる。


「燐だって…やればできるんだから!」
「燐!」


そう言って…燐は覚えている限りの詠唱をし始めた。
チッ、と舌打ちをした零が瑠海を後ろに庇いながら燐に向かってくるモンスターに向けて照準を合わせた。
しかし突然、詠唱を始めた燐の足元が光り出し、驚いた零は攻撃が止まり…。


「劫火よ焔の檻にて焼き尽くせ…!イグニートプリズン!!!!」


モンスターが迫り来る中、燐の言葉が渓谷内に反響した。

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