短編
家族
「ねえ、パパ。」
そう言って見上げると、柔らかい笑顔のパパと目が合う。
「どうしたの?」
優しい声、大好きな声が、わたしに向けられる。
うれしくて、幸せな気持ちを満面の笑みで表して、
わたしはこうお願いする。
「あいしています。けっこんしてください。」
・・・・・「え゛!?」
びっくりした顔のパパもステキと、わたしが見とれている間に、パパの思考回路は再開したようだ。
「ははー、女の子はませてるなー」
はあ、またこのセリフ……。
本気なのに、わたしの告白はこうして受け取ってもらえない。
恋ってつらいものだわ…。
あ゛ーーー!!!!
わたしがしんしんと落ち込んでいると、パパは台所へに行ってしまった。
台所には奴がいるというのに…
奴とはわたしの恋の最強のラスボス、ママのことだ。
うう、わたしの時間だったのに……
わたしが嘆いていると、パパは台所から台拭きをもって、出てきた。
「晩ご飯できたって」
そういってテーブルを拭くパパを見て、わたしはわたしの気持ちが晴れていくのを感じる。
「わたしも手伝うーー!!」
「お、ありがとう。じゃあ一緒にお皿運ぼうか。」
「うん!!」
パパと並んで歩くのがうれしくて、わたしは台所までスキップした。
はっ! 台所でママと目があう。
顔がにやけているママに、圧倒されてはならぬと私は叫んだ。
「パ、パパはわたしとけっこんするの!!!」
するとママはいきなりの叫び声にぎょっとしていたパパの腕に抱き着いて、言った。
「残念ながら、パパはもうママのものです。」
ガーーーーン
わたしの頭の中でそう響いた。
そんな、うう、うう、
わたしはついに泣き出してしまった。
それを見たパパがすぐに頭をなでながら「泣くな。泣くな。」と
困ったように微笑んでる。
パパに頭なでてもらえるなんて、う゛れ゛し゛い゛
それなのに涙は止まらない。
そうしているとママがわたしの顔を覗き込んできた。心配そうな顔だ。
「ごめんね。うそだよー」
ーわたしがけっこんしちゃうとママがママでなくなっちゃう。
それは嫌だなぁ
そう思った。
わたしがおちついてきたから、晩ご飯をみんなで食べた。
おなかもすいてなくなったから、気恥ずかしかったけど、わたしは言う決意をした。
「わたしね、」
「パパとけっこんするのあきらめる。」
「…わたし、パパの愛人になる!!」
宣言した、パパとママと3人で仲良しでいたいもん。
パパはえっ、え!?そんな言葉どこで!?と慌てふためいている。
そんなパパを苦笑いして見てたママが、チラッとこっちをみて、ありがとって笑ってくる。
わたしはうれしかったけど、泣いた手前はずかしくて、照れくさくて、変な顔でママに答えた。
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