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1page novel
貴方を見つける
――カンカンカンカン…

踏切の前で、僕は電車を待つ。

この閑静な場所にある踏切で他に待つ人もない。寧ろ辺りには誰もいない。――そういう場所を選んだ。



死にたくはないんだ。



ただ消えたいと思うようになったのは、いつからだったか

でもこの世界で消えるものなんてなくて
この雪でさえ、溶けたら水になり蒸発してまた世界を廻る


そうして死が終わりだということが信じられなくなった。


その先があるのかもしれない。そしてそんなもの僕は要らない。



無でいい。
どうしようもないほど、終わりでいい。
死んで、その先があるなんてまっぴらだ。


死が救いじゃない
そう思ったら信じられないほどの絶望と恐怖に襲われた




救われない
解放はない




死を願うことに理由があるわけじゃない
ただ口癖のように、心が「死にたい」と呟いて
いろんな感覚を麻痺させていく。



(――世界がとおい)



ああきっと、僕の涙腺は塞がっているんだろう。

いっそ声を上げて泣いたら清々しいのかな


泣けない僕の内側にはモヤモヤしたものが溜まって

それらが出たい、出たいと叫ぶんだ



(ああ、)




電車がやってくる。





そう、死にたくないけど世界に絶望してしまった僕は、命をかけて試す。

駄目だったとしても、
この命はとっくに要らないものなんだ
だから懸けるものは痛み









――カンカンカンカンカンカンカンカン




踏切棒をくぐる
なんの感慨も、恐怖さえなく









ただ待った。
















求めていたのは――




















「ッ!おい!!」









「!……痛ッ」


「……っにやってんだよてめえ!!」









望んでいたのは………












思わず浮かべた微笑みに、一筋の涙が伝う。













厳しくてあたたかい
そんな誰か




――貴方をもう離さない













きっと誰もが望んでる
待ってる
自分を肯定してくれる誰か、何かを




切ないほどに愛おしい
泣きたいほど苦しくて










あたたかい体温を
















――ずっと。





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あきゅろす。
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