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いつもの溜まり場へと向かう途中、李雨は立ち止まった。
「…大丈夫か」
「……ん、」
さっきと同じことを聞く意味がなんとなくわかって、少し言葉に詰まる。
「無理すんな」
ナミ先生のものとは全く違う、温かい笑み。
なんだか胸がキンと痛んだ。
そんな俺をも見透かすように、李雨は「上塗り」と言って俺を強く抱き締める。
出し尽くしたはずの涙がまた溢れ出て、李雨の胸を濡らした。
優しさを拒絶するくせに。
温もりを求める。
泣きながら、
ぎり、と唇を噛んだ。
****
小さな喫茶店のドアを開くと、だだだっ!という音と共に衝撃が、来た。
「っミオーーっ!!」
「うわッ」
勢いに堪えられずよろける。
が、後ろにいた李雨が受け止めてくれたお陰で、頭とドアがごっつんこすることはなかった。
「………怜、」
「うるさい李雨お説教いらない。ミオっ久しぶり!会いたかったあー」
「久しぶり、怜さん」
「あー生のミオだ…」
…生じゃない俺って一体。
まさか俺の偽物とかいるんですか。
薄暗い照明に照らされた店内には、俺や李雨を含め6人しかいない。
…毎日午後3時に営業終了する、不景気にケンカ売ってるような店だから当たり前か。
喫茶店内の雰囲気は、落ち着いててあったかい感じ。うん、オーナーの雰囲気そのままだな。
怜さん越しに店の奥に目を向けると、カウンターでオーナーが苦笑い、迅さんと涼さんが呆れた顔をして俺たちを見ていた。
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