沖銀
3
『久々の、デート。
手を繋ぐ、笑う。パフェ食べる、食べさせる。抱きついて抱きつかれて、笑う。
戯れで、キス。
楽しい、楽しく二人で。
帰り道、名残惜しく、手、離したくない。
でも、我儘は、言わない。
笑って、またね。って。
離れる、背を向ける。
歩いて、歩いて。
…ちょっと、我儘。
振り返って、あの、笑顔を見たい。
後ろ、見て
毎回見えるのは、
彼の、背中……だけ』
あ…涙、出てきちゃった。
どうしよ〜…止まらないよコレ。
うん…でもそうなんだ。
沖田くんはいつも、絶対振り返らない。
だって沖田くんの帰る場所は、
沖田くんの一番大事な真選組(ところ)だから。
「だ、旦那…」
「ダメ、触んな」
流れた涙を拭き取ろうとした沖田くんの腕を振り払った。
「あ〜…だから、さ」
自分で涙を拭き取り、背を向けた。
うん…、沖田くんの一番で居たいなんて傲慢な事思ってたわけじゃないんだ。
誰にとっても決められないものだってあるんだろうから…。
でもさ、
一番じゃなくても、沖田くんの中で大きな存在で居たかった。
「別れ、…たい」
こんな関係がずっと続いたままなら、
俺はもう…堪えられないから。
「別れよう?俺ら、これ以上無理だろうしさ」
何も言わない沖田くん。
あ〜…止めてもくれないのかな。
「……」
いつまで待っても返事がない。
………良いよ…もう。
「じゃ、そういう事で。『別れましょー』」
そう言うって……止まらない涙を、拭いもしないで、
振り返らない、で。
背中を向けた。
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