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探したよ、大切な人



その時俺は、コイツが何者か分からなかった。



色素の薄い髪にあまり日に焼けていないだろう肌、そして子供のように丸く大きな目なのに、大人びた視線を持ったこの少年。

突然入ってきた俺に驚きもせず、ゆっくりと視線をこちらに移した。この家唯一のグランドピアノを背景に、少年は小首を傾ける。


(…誰、だ?)


この貴族沖田家に雇われて約半年になる土方だが、こんな少年…いや、青年か…?(パッと見ただけでは少年のようだが、よく見ると少年には無い静かな雰囲気を漂わせていたのだ)こんな印象的な人物を、お目にかかった事は無かった。

少なくとも使用人の中には居なかった、気がする。ただ、使用人全ての顔を知っている訳では無い土方には乏しい知識だった。
ただ、服装が自分と大差ない質素にしている事から、最近入った新人なのだろうと検討をつける。


「掃除ですかぃ?」



どう反応したら良いか迷っていた土方に、思っていたより低めの声が話掛けてきた。声からしても、やはり成人した位の青年なんだと思った。


「あぁ。この部屋を任されてな。…お前もか?」

「え?」

何気なくした質問に、大きな目を更に開かせる。きょとん、という擬音がよく合うような表情だった。

「…?違うのか?」

この沖田家の屋敷は広い。だので、あまり使われて居ない部屋は掃除を行う回数は少ないのだ。
特にこのグランドピアノを置いた部屋は、ピアノを弾くという選択肢以外ほとんど無い為、ほぼ半月に一回と回数は極端に少ない。
そんな部屋を任されると、一回分の掃除の力の入れ方も変わるし、広さもそれなりにあるので一人では少々時間が掛かり過ぎるのだ。その為、手が空いた者が手伝いに来ると事前に報告を受けていた。

だから、この正体不明なコイツは、手伝いに来た使用人の一人なのかと思っていたのだが…違うのだろうか?

「あー…。いや、そうなんです。掃除といやぁ掃除らしきもんをしに来ました」

「掃除らしきもん…?」

「そうですぜ。まぁ細かい事は気にしないで、ほら早く始めましょうよ。何処からやるんですか?」

有無を言わさないような勢いから土方は始めざるを得ず、従うままに掃除を開始した。




20081015 狛崎雨

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