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よみもの~中等部編
8~kaoru

「それでは、奏音ちゃんのコンクール金賞受賞と
 薫の全国大会優勝を祝し...かんぱーーーーいっ!」
父さんの乾杯の音頭で、お祝いの会がはじまった
「薫君、おめでとう!!すごいですね、中学テニス日本一ですよ」
「いえいえ、奏音ちゃんこそ、金賞、すばらしいじゃないですか」
「いやいや、来年は葉末君も青学受験されるんでしょう?
 そうなったら、兄弟でテニス部を引っ張っていくんですねぇ」
父さん同士、子供の褒め合い。。。
母さん達は。。。
「穂摘さん、これ、食べてみて」
「あら、おいしい、牛の煮こごりかしら」
「この穂摘さんのサーモンマリネもシャンパンに合うわね〜」
料理の褒め合い。。。

「さ〜て、とっておきを出しますかな?」
そう言って、おじさんは氷の入った銀色のバケツから、どっしりとしたビンを取り出した
「おぉ!ドンペリのローズじゃないですか!!
 それも2000年のヴィンテージもの、これはすばらしい!!!」
父さん、ワインの事わかるのか?俺、初めて知ったよ
「折角のお祝いですよ、海堂さん、今、飲まずして、いつ飲むんですか!!」
父さん達、何張り切ってるンだ?
ま、俺には関係ない、と、そう思いながら、料理へと目を戻す
すると、さっきまで葉末といっしょになって、
テーブルの上の料理を次々とつまみ上げていたハズのアイツの。。。
。。。目が、輝いている。。。
「お父さぁん」
細長いグラスを片手に二つずつ持ち、おじさんにすり寄っていくアイツ
「私もちょっと欲しいなぁ...特別、特別ぅ〜」
うぇっ!?
しょうがないな、奏音ちゃん、ちょっとだけだよ、と
おじさんは、細長い足付きグラスをあと2つ取り出し、
計6本のグラスに、うすピンク色の液体を入れていく
一つは父さん、もう一つは母さん、そして、おじさんと、おばさんと。。。
少なめに注がれたグラス、一つはアイツ、もうひとつは。。。って、まさか。。。
「薫君、お父さんの許可が出たよ!」
なんだって?
俺?俺なのか!?
「葉末はもう少し大きくなってからね」
そう葉末をさとし、俺に向き直った母さんは、にっこりと笑う
か。。。母さん?いいのか?ホントに??
少しでも葉末が仲間はずれにならないように、と、
薄黄色の炭酸の入った飲み物を、同じグラスに注いでおじさんは葉末に渡した

「それではもう一度!カンパ〜イ!」
と、おじさんが音頭をとり、二度目の乾杯をした
大人達は、このうすピンクのとても細かい泡がぷつぷつ浮いてくる飲み物を、味わっている。。。ようだ
口々に、このお酒を褒めている
アイツは、というと、きれいな色〜と、グラスをライトにかざしながら、ソレにみとれている。。。ようだ
そして、一口、口に含む。。。飲込んでないよな?何をしてるんだろう??
「すっごい、口当たりいい〜〜〜」
えぇっ!?
それは、中学2年生の言うセリフなのか?そうなのか??
「アレ?海堂君、飲まないの?」
「オレっ!?え、だって、飲んだ事ないし...」
今日は公認だよ、と、ふにゃっと笑って、
2口分くらいしかない、そのドンペリとやらを大事そうに飲む
「一気に飲まないで、ひっくり返っちゃうといけないから...
 ちょっとだけ、口の中を湿らせる程度に、ね?」
「かのんちゃん、それっておいしいんですか?」
葉末が自分の飲み物に口をつけながらきく
「うん、お酒ってカンジじゃないの、炭酸も、ね、すごくきめが細かくて飲みやすいですよ?」
オイ。。。いくらなんでもそりゃ、中2女子のセリフじゃねェだろ。。。
「へぇ、僕ものんでみたいなぁ...」
葉末〜〜〜〜ぇっ。。。
「はずえクンは...」
と、アイツ、ん〜〜〜〜〜、と、考えながら、ちょっとかして、と、葉末のスプーンをひったくり
その端をちょん、とグラスの中の液体につける
「はずえクン、あーんっ、はやくっ」
スプーンを葉末の舌につける
葉末は、妙な顔になり、よくわからないけど、コッチの方が美味しいと思います、と
自分のグラスを指差して、無邪気な顔をアイツに向けた
「海堂君、まだ飲んでないの?」
「あ...ああ...」
俺は半ば仕方なく、でも、初めてのお酒ということもあって、少しだけ興奮しグラスを口に付けた
「..........」
「どう?」
ワクワクした顔が向けられる
「..........」
「どうしたの?」
ちょっと困った顔
「...うん、俺...」
「薫君、どうだい?初シャンペンの味は?」
おじさんが、またあのいたずらっ子のような顔を向ける
「薫、初シャンペンが、ドンペリローズだなんて、すごくラッキーだぞ?」
父さん。。。
みんなのワクワクした。。。期待に満ちた顔が俺に向けられる
「うん...おいしい...のかどうか、わからない」
その感想に、みんなが大笑いしたのは言うまでもない

父さんは、俺のグラスを奪い取り、もったいないから、父さんが飲むな?と、うれしそうだ
父さんの空になったグラスに、葉末と同じドリンクを注ぎ俺に押し付けた
あいつはまだ、うれしそうに、ちびちびとうすピンク色の液体を口に含んでいる

新しく貰った飲み物は、炭酸のきいたグレープジュースだった
やけに味の濃いサイダーだな、と思っていると、
アイツが、コレも一応100%ジュースなのよ?おいしいでしょ
と、空になった自分のグラスに、そのジュースを注いでいる所だった
「キャビア、早くしないと、お母さん達に全部食べられちゃうっ、はずえクン、急ごっ♪」
上機嫌のアイツ。。。まさか、酔っぱらってる、ってことはないよな?

俺達、子供グループは、キッチンのカウンターを陣取り
食欲に任せて、料理をせっせと口に運ぶ
「ね、そろそろご飯食べたくなってこない?」
「そうですね、兄さんは?」
「そうだな」
アイツは、首をのばして、炊飯器の方をみると
計ったようにブザーがなり、ご飯が炊きあがった、すごい絶妙のタイミング
茶碗にラップをかけ、そこにご飯をよそう
そしてそれを、あちち、といいながら、ラップで軽く包み
「はい!自分でおにぎり作る!!」
と、俺と葉末に、ご飯をよこした
みんなで、あちっ、っていいながら、適当にご飯をにぎる
それだけでも楽しくなってくる
すげぇ、おおざっぱだけど、こういうのもいいな
始終こんな様子で、かなり調子に乗って食べてしまい、
俺も葉末も、服の上からでも、胃がでているのがわかるくらいだ
アイツも、食べるペースが落ちている所をみると、かなりハラがふくれているんだろう

「奏音ちゃん、ピアノ、ピアノ!」
か。。。母さん!?
まさか、酔っぱらってる?
「奏音ちゃぁ〜ん、お母さん、モーツァルト聴きたい〜」
おばさんも、酔っぱらってる?
いや、おばさんはいつもこんなカンジだよな?
アイツは、はは、っと笑って、シンクで手を洗い、ピアノを弾き始めた

そして、ピアノや食事が一段落したのは、8時半になるところだった
父さん達は、お茶漬けを食べた後、今度は、父さんの持参したブランデーをちびちび舐めながら
のんびりとしたペースでビリヤードを始めた
母さん達は、残り物を片付けたり、食器洗浄機に食器を放り込みながら、
何か楽しそうに話をしていた

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