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よみもの~中等部編
14 ~canon

この綺麗な人。。。柳さん。。。
さしずめ、月下美人ってところかな。。。
静かで、キレイで、聡明なカンジ
元気で楽しい真田さんとは正反対っぽい

柳さんのリクエストに応えていると、瑞希ちゃんのケイタイが鳴った
「...あの、ごめんなさい、カノン先輩...お母さんが迎えにきたみたいなので...」
「あぁ、そう、そうね...気をつけてね?」
「ハイ、ありがとうございました」
私の後輩。。。かぁ。。。
素直で、かわいい。。。
ドロドロしてる私とは正反対
今日はピアノをきけなかったけど、きっと、素直な音が鳴るんだろうな


瑞希ちゃんが帰ってから、真田さんと柳さんと、
さっきまで弾いていた曲について、お話をしていると、ふと、思いつく
「...あ...そうか...
 真田さんって...っていうか、真田さんと柳さんがお二人で並んでいると、
 なんだか、和風ですよね?」
さっきも思った、お内裏様とお雛様
柳さんの伏し目がちな表情に色が入る
かすかな動きでも、目が離せない。。。
海堂君とはちがう、優しい顔
「なかなか面白い事を言うのだな?」
「すみません...急に頭に浮かんでしまって...」

桜の花びらが、ひらひら、ひらひら

「この曲なんですけど...」
今にも消えてしまいそうなほど儚くてキレイ、
その場にふんわりと佇む柳さんは花びら
何があっても揺るがない強さをもった真田さんは幹
二人が並んでいると、まるで一本の桜のよう

一本の桜の幹、ふんわりと霞むひらひら花びら。。。ふたりでひとつ

「成る程、さくらさくら、か...
 君は、人の本質を見抜くことに長けているのだな?」
「いえいえ、よく『本能と勘だけで生きてる』って言われます」
そう、本当に自分の事ばかり。。。
そして、いつも裏目に出るんですよ。。。いつだって。。。人を傷つけて。。。
「しかし、蓮二...
 彼女はそう言う事に秀でているだろう?
 だから、海堂を選んだし、海堂が選んだ女性だぞ?」
「なるほど」
そんな、さらっ。。。って、言わないでください
海堂君を選んだのは私。。。でも、海堂君は。。。
海堂君は、もっと他の人を選ぶ事ができるんです
それを。。。認めたくない。。。許せない狡い自分がいるんです

「折角なので、一曲お願いしてもいいだろうか?」
「はい?」
「そうだな...何か得意な曲を...」
「得意、ですか...ウゥン...難しいな...」

私の、狡い心
それでも、海堂君への気持ちはうそじゃない

「あーーー...じゃあ、今レッスンしてる曲でいいですか?」


それだけが、私のちいさな


そして


「お粗末様でした」


つまらない自尊心


「それは?」
「ショパンのソナタ3番、終楽章です」
「君は、何を想ってその曲を弾いているのか?」
ほんとうに綺麗な人。。。
その笑顔は、全てを見透かすよう
それなのに、不安を感じない。。。恐怖も。。。


  「負けないように...
   何があっても...

それは、わたしの弱い心

   自分自身を貫けるように
   見失わないように

その弱さが、周りの人を傷つける

だから

   強くなりたい、と...」


「...そうか...君は...」

きっとこの人にはわかってる
私がどれだけつまらない人間か、ということが。。。

狡いか、が。。。

「真田先輩、柳先輩もっ!」
空気読めない子犬のワルツのアカヤ君が飛び込んできた
「交流会終わりましたよ〜〜〜、帰りますよ〜〜〜〜〜
 もう、自分らばっかりズルいっスよぉ〜〜〜
 俺一人で、どんだけ苦労したか」

アカヤ君はいいね。。。

「なにを言うか、お前は部長だろう?
 これからは俺達を頼ることは許されんのだぞ?」
「そうっスけどぉ〜〜〜〜」

甘える事ができる人がいて

「泣き言を言うな」

『泣き言』を言える人がいて。。。
海堂君は、海堂君には、ソレを言える人がいないんだよ?
そして
私みたいな子がいるせいで、
いつも我慢して、自分ばっかり。。。我慢して
愚痴すらも言えない

音楽室のドアの前に佇む海堂君

ねぇ?
本当にいいの?


あなたに笑いかける事しかできない

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