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よみもの~中等部編
10 ~kaoru

「詩織ちゃん、キレイだったよ?」

切原の声にハッとする
ちら、と、ヤツを見ると、いつもの人懐っこい笑い顔とは違う笑みを浮かべていた
しかし、キレイだと言われた詩織本人はというとテレるでも、喜ぶでもなく、

「アンタには聞いてない」

そうぴしゃりと切原をおさえつけて、俺ににこ、と笑顔を向ける
確かに。。。
かのんの化粧は、コレに比べれば、無いようなもんだな
だが、やっぱり美人は何をやっても美人だ
もともと大きい目が化粧によってより強調されてる
それにしても、かのんも白いけど、コイツも幽霊か、ってくらい真っ白だ

切原はペーパーバッグから透明の箱に入った白い花輪を取り出し、彼女に差し出した

「本当にキレイだったよ」

切原の何度つっけんどんに返されてもヘコまないタフさもだが、
それ以上にヤツの素直さに、俺は面食らった
俺なんて思っていても、絶対に言わない、いや、言えない

「わぁ、ステキ!!これプリザ!?」

かのんが白い花輪に歓声をあげると、切原がへへっと笑う

「ステキねぇ...
 アカヤ君、早く渡してあげれば良かったのにぃ
 ね?詩織ちゃん、これ髪飾りにしたら、もっと素敵だったと思わない?」

素直なかのんのセリフに、彼女の方も悪態をつけないでいる
それどころか、少しだけ笑ってるようにもみえる
そう、か。。。
かのんはこうやって人を和ませる
意識しないでそれができるからこそ、好かれるんだろう

「海堂、お前だってなんかあるんだろ?」

切原のコトバにかのんは俺に期待の目を向けた

「あ?あるはずねぇだろ?」

「ないの?」

「母さんから差し入れと花、貰ったろ?」

「うん...」

「お前、冷てぇな?みろ、カノンちゃんがっかりしてんじゃん」

「コイツは花よりも、腹にたまるモンの方がいいんだよ」

ぷぅっとむくれるかのんに俺は小さな箱を渡した

「ホラ」

チョコレート
かのんの好きなチョコレートは買えなかったけど、
これだってそれなりにウマいヤツだ

「わ♪」

むくれた顔が一瞬でふにゃっと崩れて笑顔になる

「ホラ、な、やっぱりだ」
「なんでもいーもーん」

さっそくリボンをほどき、切原達にも食べる?と、ずい、と箱を差し出す
本当に色気より食い気
だけどこれが本当のかのん

俺の好きな、かのん、だ

「オイ、一気に全部食ってんじゃねぇぞ」

かのんは、ん?何で?と、またチョコレートを一つ口に放り込む

「それ、後で味見させてくれるんだろ?」

かのんにだけ聞こえる位の小声でそう言うと、かのんは一瞬ぽかん、としたが、
意図する事がわかったらしく、くちゃっと顔を萎めて、もう!と俺の腕を小突いた

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