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よみもの~中等部編
6 ~canon

会場は5時半
5時を過ぎるとだんだんと楽屋も熱気を帯びてくる
そして、みんなのケイタイが鳴り出すの

例に漏れず私のケイタイも。。。
メッセージは、お母さんから
今、会場に着いたよ、って、もちろん、海堂君達も一緒だっていう内容
そして、ちょっと出てこれる?って書いてある

私は詩織ちゃんのお母さんに、今外で母に会ってきていいですか?って聞くと、
衣装が汚れるといけないから、自分がお母さんを呼んできてあげるわね、って控え室からでていかれた

詩織ちゃんのお母さんに連れられて楽屋迄やって来たお母さんは、私をみて、
あらー、うちの娘ってこんなだったかしらねぇ、と笑う
そして、詩織ちゃんのお母さんに、衣装や支度のお手伝いしてもらった事へのお礼をする

お母さんの用事って、海堂君のお母さんからの差し入れだった

「穂摘ママからの差し入れ、皆さんでいただきなさいね?」

わわわ、なんだろう、なんだろうって、ワクワクしてると、詩織ちゃんもなになに?って寄ってくる

お母さんは私に渡し物をすますと、お世話になります、と詩織ちゃんのお母さんへもう一度挨拶をし、直ぐに楽屋を出て行った

「ね、ほづみママって誰?」

詩織ちゃんは私の持ってる箱をあけてもいい〜?って、さっそく私達が陣取ってるテーブルへと持って行く

「海堂君のお母さん、お料理がとっても上手なの」

「海堂君って...あー!あのカレシ君のママ!?来てるの?
 ...あ、そっか、そう言えばいっぱいチケット買ってくれたもんね」

何々、って今度は安芸ちゃんと絵里ちゃんの目が差し入れの箱に釘付け

「奏音ちゃんのカレシ君ママから差し入れだって〜」

「奏音ちゃんカレシいるんだ?」

どんな人〜、なんて突っつかれるんだけど、はは、って私は笑う事しかできず。。。
だけど、詩織ちゃんが早速箱を開けると、私の『カレシ』のことなんて二の次
わぁ〜って、詩織ちゃんはもちろんのこと、
安芸ちゃんと絵里ちゃんもかわいい〜っ、って歓声をあげた

箱の中には、プチシュークリームがコロコロと入っていた
アイシングとミモザやスミレの砂糖漬けで可愛くデコレーションされてる
それに、口の中にぽん、と放り込める大きさだから、手も汚れないし、口紅もおちない
さすが、穂摘ママ!
こういうところまで気遣いができるんだもん、やっぱりステキなお母さんよね

詩織ちゃん達は。。。まあ、私もだけど、プチシューをポンポンと食べながら、また、海堂君のハナシに戻る

「奏音ちゃんのカレシ、私、会ったことあるけど、すっごくカッコいいんだよ!」
「ホント!?」
「うん、背も高くて、美人顔!」

あーー、それ、的確
普通にしてる海堂君は確かに美人さん、だもん

「テニスするんだよね?」
「なんかそれだけでカッコいい気がする〜」
「だからー、カッコいいんだってば!!大人っぽいけど...同級生だよね?」

ソレいうんなら、アカヤ君だってカッコいいんじゃ。。。
と、言いたいけど、なかなか私が口を開く間もない程、3人は盛り上がってる
まあ、いっか。。。と、ぽん、ともう一つシュークリームを口に放り入れた

それにしても。。。

鏡に映る自分の姿が、ふいに目にはいった
冷静に考えて私のこの格好。。。

綺麗な衣装をきせてもらってうれしい反面、似合ってないんじゃないか、とか、
お化粧がヘンだっておもわれないかな、とか。。。
うわーっ!そんなコトよりもっと気にすべき事があるでしょ、私っ
演奏の心配は。。。不思議とないけど、場慣れしないっていうか。。。

でも、がんばるしかないよね!

順番がくるまで楽屋で穂摘ママの差し入れのおやつをつまみながらおしゃべりをしたり、ウォームアップをする
テレビモニタで、今の舞台の踊りを観る事もできる

「シルフィード組、お願いします」

ボランティアのお母さんが、私達を楽屋に呼びにきた
私達4人は、は〜い、とお返事
私は楽譜と小さなハンカチタオル、お水を入れたトートバッグを手に持ち、
詩織ちゃん達は、タオルやお水、ティッシュや鏡も入ったバスケットをそれぞれに持って楽屋を出た
それにしてもみんな100円ショップで売ってる様な持ち手付きの籠に、
リボンやレース、チャームで飾り付けて自分の目印にしてる
こういう所が女子力が高いなー。。。なんて、感心してる私
うん、やっぱり私、女子力とかまったく無縁の人でした
ちょっとは見習おう

舞台そでへ続くドアまでくると、音楽や拍手が聞こえる
そして、壁に貼ってあるプログラムには、出し物と出演者の名前
それをみながら、今、さきちゃんのドンキだね、とか、あと何人だね、ってこそこそとおしゃべりをする私達
そでに入ったら、こっそり舞台を覗いたりして。。。
こういうのはピアノの発表会と一緒なんだなぁ、って、思うんだけど、
なにせ、バレエに関しては素人の私
詩織ちゃん達が、ダブル決まった!とか、よし!って言ってるのはよくわかんないなぁ

。。。と、感心したり、驚いたりしてる間に、前の人の演技が終わった

詩織ちゃん達は身体を冷やさない為に着けていたストールやレッグウォーマーを、あのかわいいバスケットに入れて、
お水を一口飲んだり、軽いストレッチのような仕草

3人の緊張感が伝わってくる
でも、それにのまれちゃダメ

照明が薄暗くなり、ピアノが舞台の隅。。。打ち合わせされた位置に据えられると、舞台は真っ暗になる

なるべく音を立てないように定位置に付く私達
詩織ちゃんの指が、とん、と私の肩を叩く
それを受け取った私はぽん、と、ピアノのキィを打つ
始まりの合図。。。

舞台に青白いライトがともると、客席からほぅ、と、溜め息が上がった

安芸ちゃんは、ピアノに肘をつき、絵里ちゃんはピアノのすぐ横に座って、
二人とも『シルフィードらしいポーズ』で、眠ってる
詩織ちゃんは私の肩に手と頭を添えて眠ってるの

一呼吸あって、詩織ちゃんはすぅっと起き出して、
空気の軽さでステップを踏み、あの大きいジャンプ
ロマンチックチュチュがふわりと空気をはらむ
こういうふわふわロングのスカートの衣装をこう呼ぶんだ、っておしえてもらった

詩織ちゃんと同じタイミングで呼吸をする
詩織ちゃんの身体がピアノの音を身にまとう

シルフィード。。。空気の妖精

大きなジャンプ、小さなジャンプ
ふわふわ、と、身体が空中に浮いてるよう

つま先立ちでするすると移動をする姿は、水面をわたる風


なんてきれいなんだろう


空気の記憶を舞い、夢を形造る妖精


フィナーレは、グランワルツ

幻の様に漂う雰囲気だったみんなの踊りが、
空気がポン!と弾けたように変わる

三人の妖精達が舞う姿は会場だけでなく
私の気持ちまでも高揚させた

会場の空気も震え出すような感覚

こんな演奏ができるって不思議

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あきゅろす。
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