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よみもの~中等部編
8

歳を越す瞬間を、またみんなで祝った
だが、前の年越しの時のように、映画を夜通し観るという様な事はなく、
それぞれの寝床に早々につくことになった

かのんを部屋へ連れて行き、おやすみのキスを交わす

「海堂君」

部屋を出ようとする俺を、かのんが呼びとめた

「おぅ」

「あけましておめでとうございます」

ふにゃっと笑う顔
だけどそれは、少し寂しそうに見えて。。。
決して泣きそうだと言うわけではない
だけど
俺も少しでも長くかのんといっしょに過ごしたかった
俺はまた部屋のドアを閉めて、かのんの傍らに腰を下ろした

二人してベッドの端に腰掛け、指先を絡める

「海堂君...」

「どうした?」

「うん...」

かのんは俺の肩に、こてん、と頭をのせた

「ちょっとだけ...」

俺は握っていた指をはなし、かのんの肩を抱く

「母さん達に見つかったらコトだぞ?」

「そう言いながら、この手は何かな?」

ちょんちょん、と、俺の手を指でつつきながら、くすくすと笑うかのん
俺は、その減らず口を叩く唇を指でつまんでやった
そして、すっと指を頬に滑らせると、かのんはふにゃりと笑う

「ま、ちゅうは誰かサンがばらしちゃったしね?
 コレくらいは...ってカンジ?」

「そう言う事だ」

「何がそう言う事、なんだか」

そういって笑うかのんの唇にそっと触れ、また指を握りなおした
ふふっ、と小さく笑うその顔に、微かにかげりがさす
かのんは額を俺の肩に押し付け、ぽつ、とつぶやいた

「また...一年...」

「何だよ?」

ふっと小さな溜め息

「...ううん、なんでもない」

かのんの指先がぴくり、と震える

「一年でいいのか?」

また、指先がぴくんと跳ね、ゆっくりと顔を上げたかのん
目を丸くして、俺の顔をまじまじと見つめる

「ずっと、だ」

大人が聞けば、子供の戯言だというだろう
それでもいい
だけど子供の俺にだって、それくらいの覚悟はあるんだ
今この瞬間、かのんへ伝えた言葉は嘘じゃない


ずっと、側にいたい


指を絡め直し、その指先に力を込める
俺も、かのんも。。。

「ずっとだ
 ずっと、お前の事、好きでいる」

かのんはふにゃっと笑う

「海堂君...大好き」

ちょっとかすれた声
涙声になってるみたいだ

でも、そんなお前が大好きで、その言葉を聞けるのがうれしくて、
俺も、と、口を開きかけた途端に、
かのんは、ぷいと、部屋の反対側を向いた
あれ?
照れてる?
こんなかのんは初めてで。。。
いつもなら、こういう態度をとるのは俺だって相場が決まってる
そう思うと、急におかしくなってきて、
そして、逆に照れてしまって、つい、ふざけてしまうんだ


「へぇ、そうか...知らなかったな」


かのんはぶん、と顔を戻して、ついでに俺の胸を叩きながらこういうんだ


「もうっ!海堂君のバカっ!!!」


な?これなら、いつもの俺達、だろ?

その声におばさんと母さんが呆れ顔を覗かせた

「またアンタ達は...なぁ〜に一年の初めからケンカしてるの?」

「だって!海堂君がイジワル言うんだもんっ!!」

ぷうっと頬を膨らませて、俺を悪者にするかのん

「俺は何時だって親切なつもりだがな?」

ふんっと鼻を鳴らす俺

「薫も...いい加減にしてちょうだいよ?」

溜め息まじりの母さん、でも笑ってる

「一年の計は元旦にあり...今年もアンタ達はこうなんだ、ははっ」

母さんとおばさんは、おやすみと笑って、部屋のドアを閉めた


母さん達が部屋を出て行って、一呼吸置いてから、カノンはくすくすと笑い出す

「ホント、私と海堂君って、いっつもこうよね?」

そうだな、おばさんの言う通り
また今年も一年、こうやってふざけて、笑っていられればいいな

そしてお前のいろんな表情を見逃さずにいこう


俺の一年の抱負
心の中で誓う


  ずっと、そばにいる

****************
あとがき

夏真っただ中に、なんで年末のハナシをあげてるんだ、って自分でも笑っちゃうですよ(爆)
もう、季節感もなにもない文章でごめんなさいです。
続き物書いてるとこういうことも起こるよね!
特に、更新が停滞していると、こういうことは起こりがちだよね!
…開き直ってどうする(土下座)
この調子で行くと、海堂君のお誕生日エピソード…
もとは5月11日にちゃんと間に合うように更新する予定だったおハナシも、
『風薫る季節』どころか『木枯らしの季節』くらいになるかもね!!
人生、予定通りなんていきませんよ、ええ、ええ(謎笑)
17th Aug.2013


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