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よみもの~中等部編
6

大晦日

おばさんがおじさんを迎えにいっている間にも、俺のやる事は沢山ある

年越しソバは、恒例の俺製手打ちソバ
今年も7人分のソバを捏ねなきゃならねぇ
あらかじめ母さんはおばさんにソバを捏ねる為の大きな盆と、ソバ粉を渡していた
『薫にソバ捏ねさせておいて』と。。。いや、別にいいんだけど。。。
ソバを捏ねるのは嫌じゃねぇ

それから、かのんの世話はもちろんだが、洗濯と。。。
流石におばさんも、俺にかのんのヒラヒラをどうにかさせようとは思わなかったようで、
手際よく洗濯物を仕分けて、俺の分だけ干せばいいようにしてくれていた

。。。けど

干さなくてもいいからって言っても、干す場所は決まってるわけで。。。
俺はなるべく、かのんのヒラヒラから遠ざけて自分の下着を吊るした

何か俺。。。
もしかして、おばさんに試されてるんじゃねぇか?なんて、思えてきて。。。
いや、試されるってなんだよ?
別に俺は、なにもやましい気持ちなんて持ってない
持ってない。。。はず、だ。。。

。。。けど

やっぱり、一番に目につくのは『ヒラヒラ』。。。

うおおおおおおおおおおおっ!
精神力だ!
精神力で乗り切るんだ!!
精神力では誰にも負けねぇんだろ、海堂薫っ!!!

そ、そうだ!
俺にはまだ重要な任務が残っている

今、重要なのは、ソバを捏ねる事
おばさん達が帰ってくる迄に、
力づく。。。じゃなくて、力を込めてソバを捏ねなきゃいけねぇ!!


そう
俺は精神力で乗り切った
。。。というか、ヒラヒラが目についたからって、
そのヒラヒラをどうこうしよう、とか
ヒラヒラの持ち主をどうこうしよう、とか
そういう衝動は全くと言っていい程、湧いてこなかったわけで。。。

いや。。。それって、犯罪だろ?
流石にそれは。。。マズい。。。ってレベルじゃねぇだろ!

こんなちっちぇえ布切れのヒラヒラごときで、
この俺が犯罪者にでも成り下がるとでも思ってんのかよ、けっ!!

それにだ!
たまたま、俺の身近には存在しないってだけで、
こんなの、別に、めずらしいもんじゃねぇだろ?

何か言い訳たっぷり、未練たっぷり。。。に。。。聞こえなくもねぇ。。。


と、とにかく


まあ、なんだ。。。そういうことだ。。。

。。。ということに、しておいてくれ


と、誰に聞かせるわけでもない言い訳が、頭の中でぐるぐるとまわっている


そういうことで。。。

俺はダイニングでソバを捏ねてる
今日もかのんはリビングの小さいピアノで、俺の好きな曲を弾いてくれる

時折、目を上げると、かのんも同じように俺に目を向け、ふにゃっと笑うんだ
おだやかな時間
そこに流れるピアノの音
そして、お前の笑顔

時間は止まってはくれないけど、

一瞬一瞬を忘れずに、そう、思い出の写真が増えていくように、
ひとつひとつの笑顔を心の中に溜めていく
そう、その『時間』その『瞬間』は永遠だから

。。。なんて、俺とした事が。。。
どうしてこんなに感傷的なんだろう

それもこれも、かのん、お前のせいだぞ?
でも、ソレも悪くない、と思う自分がいるんだ

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