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よみもの~中等部編
5

いろいろと俺にしてみれば冒険もあったりしたが、無事に家に着いた
大量の買い物は、車から一度に持って降りる事ができず、
3度程、一階と二階を往復する目にあったが。。。まあ、予想の範疇だ

荷物を片付けてすぐに、夕食の準備にとりかかる
俺も手伝うと言うと、おばさんは、またピンクのヒラヒラのついたエプロンを俺に渡した
そんなに俺にこのエプロンを着せたいのか、おばさんは。。。
それほど迄に見たいんなら。。。着てやろうじゃねぇか

「あら、よく似合うじゃない」

それを着た俺をみて、にやっと笑う

「そうスか?」

俺だって平然と言ってのけてやるよ
海堂薫をなめんじゃねぇ
。。。と、思ってたら

「やだっ!何っ!?海堂君っ!?!?」

練習を終え、レッスン室から自力で上がってきたかのんが、
階段の手すりにつかまりながら、丸い目を向けている

「やっぱり...こういうの、着てみたかったんだ?」

かのんの顔は、俺をからかってやろう、とか、笑い話にしてやろう、とか、
とにかく、そんな顔じゃない

「似合うだろ?」

何と言うか…奇妙なものを見る顔つき、といえばいいだろうか。。。
こう『ありえないだろ、それ』っていう、顔、だ

「それ...本気で言ってるの?」

「もちろんだ」

ヤケクソにきまってんだろ!!

俺はピンクのヒラヒラのエプロンを着て、おばさんと夕飯の支度をする
その間もかのんは、リビングのピアノを弾いている
こうやってかのんが、ピアノを弾いてる姿をみるのもいいな
家の中に音楽が流れてるって、いいな。。。って、思うんだ

今夜の夕食は、シーザーズサラダ
チキンチョップに、ほうれん草とチーズのトルテリーニ
スープはミネストローネ

俺はサラダの準備と、ミネストローネの番
鶏肉の焼き具合に会わせて、パスタを茹で、トマトソースをあわせていくおばさん

「薫君って手際良いわよね〜、ホント、助かっちゃう
 穂摘ママに感謝しなきゃね♪」

そういうおばさんだって、かなり手際は良いと思うけどな。。。


食事がはじまると、かのんのふにゃふにゃ顔がさらに緩む

「やっぱり、お家で食べると落ち着く〜」

パスタをぱくぱくと口に運びながら、もっと食べたいな、とモゴモゴ言ってる

「そりゃね、好きなものを好きなだけ食べれるもんね?」

おばさんが自分の皿から、パスタを少しだけ取り分けると、
本当にしあわせそうな顔をする

。。。まったく、よく食う。。。
でも、そんなかのんを見るのも楽しい

「俺のも食うか?」

「え?いいよ〜、そんなコトしたら、末代まで祟られそうだもん
 『俺のメシとりやがって』って」

「そりゃお前だろ?」

そんな俺達をおばさんはくすくす笑いながら見てる

「本当に二人とも...」

「何?」「何スか?」

「口を開けばケンカしてるか、食べ物のコトばっかりよねぇ?
 まったく、変わってるわよ」

おばさんにそう言われて、俺とかのんは真面目な顔を見合わせる
そういわれれば。。。
そりゃ、そればっかりじゃないけど、確かにおばさんの前ではそうかもな

かのんも同じ事を考えてたのか、うぅん。。。と、言うと、
急に、にっ、と笑って口を開いた

「そりゃね!
 誰かサンは、二人っきりになると急にラブラブモードに入っちゃうから〜
 そこのトコロは、心配しなくても大丈夫だからねー」

おまっ。。。!?
焦る俺をおばさんもにやにやしながらみてる

「ナルホド〜!
 そこは心配しなきゃいけない所だけどねー、お母さんとしてはーー」

。。。俺、完全に遊ばれてる。。。
しかし俺だって、やられっぱなし、って訳にもいかねぇ

「心配しなくてもいいっスよ?場所もヒマもないっスから」

もう俺達は三人とも押さえきれずに、互いを見合いながら笑った
楽しい食事
それもこれも、お前が明るい顔をしてるおかげだ


夕食の片付けも終わり、夜は外に走りにいくつもりだったが、
何かあった時、俺がいないと困るかもしれない、という責任感もあったし、
俺の為にわざわざルームランナーと3in1のウェイトマシーンをメンテにかけてくれたらしい
折角だから、使わせてもらわない手もないよな、と、
俺にしちゃめずらしく、うきうきとトレーニングに励む

マシンは合宿所においてあるものと同じもので慣れていたのですんなりと使えた
それに、ここもある程度の防音になっているらしくて、外に音が漏れる事はほとんどない
やっぱり、この家、お金のかけ方が普通と違う。。。


トレーニングを終えた俺に、おばさんがお風呂に入りなさいね〜、と、声をかける

「あ、俺、最後でいいです...」

「いやいやいや
 奏音ちゃんのお風呂のお世話はさすがに頼めないからね、先に入っちゃって?」

それもそうだ。。。

「すみません...先に頂きます」


風呂から上がると、かのんがリビングのソファに腰を下ろしてテレビを観ていた

「風呂、ありがとうございました」

キッチンにいるおばさんに挨拶をすると、お水?ジュース?それとも牛乳?と言う
俺は、牛乳を貰って、かのんのいるリビングへ移動する

「海堂君、お風呂上がりでほかほかだね〜
 お部屋、エアコン点いてるから湯冷めしないうちに上がってね?」

かのんは、私も入ってこよーっと、と、杖とソファの肘掛けを頼りに立ち上がろうとする

「ホラ...」

俺は、牛乳の入ったコップをテーブルに置き、かのんの手をとる

「無理してまたコケたらどうするんだよ」

ふにゃっと笑って、素直に俺の首に腕をまわす
そして俺は、かのんの腰に腕をまわして、抱きかかえる

「ありがとう、海堂君」
「これくらいしねぇと、俺がココにいる意味ないだろ?」
「そうだった、そうだった、海堂君、便利屋さんだったもんねー」

ふにゃふにゃ笑いながら、減らず口を叩くお前を、
このままぎゅっと抱きしめたい衝動
だけど、おばさんの視線を感じて。。。マズい。。。

「なぁ〜んだ♪
 二人っきりにならなくても、じゅ〜ぅぶんラブラブモード入っちゃってるじゃない?」

ホラ、やられた。。。
どう転んだ所で、俺もかのんもおばさんには敵わねぇ

「ホラ、早く風呂に入ってこい」

俺は苦笑いをするしかなくて、
それでも、こんなことを笑って許してくれるおばさんにも感謝するんだ

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あきゅろす。
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