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よみもの~中等部編
4

二人でケーキのショーケースを眺めていると、おばさんが、誰かに声をかけられた
「あら、菊池さん?」
「こんにちは、百瀬さんも買い出し?
 ホント、年末は物が高くてイヤになりますねぇ」
「そうそう、それでも買い物をしないわけにもいかないものね...あら?」

モモセのおばさんにこんにちは、と頭を下げると、あら、と、首を傾る

「いいでしょ、若いツバメ〜だったら、なおさらいいんですけどねぇ?」
「お、おばさんっ!?」

何て事言うんだよっ!!
大慌ての俺の腕に巻き付いて、けらけら笑いながら会話を続ける

「実は娘のカレシなんですよ〜
 カッコいいから、ついつい連れて歩きたくなって、あちらの親御さんから借りてるの
 娘は怪我してて、役に立たないし」

ひでぇ言われようだな、かのん。。。ちょっと同情するぞ

「主人は、明日の昼しか帰ってこないから、男手もなくて大変で」

世間体ってヤツか?
人手がいるから借りた、ってのは、俺には言い訳にしか聞こえねぇ。。。

「ああ...そうですってね、奏音ちゃんのお加減いかが?」
「術後はいいみたいで、今は、リハビリでうなってるわ、あははっ」

笑うな
ってか、一人娘だろ?
もっとこう、大切に育てよう、とか
蝶よ華よじゃねぇけど、なんかあるだろうが??
延々と話が続くかと思った時、素っ頓狂な声が上がった

「お母さ〜〜〜ぁあっ!?カレシ君っ!?!?」

コレは。。。えぇと。。。誰ちゃんだったっけ?
俺、ホント名前おぼえるのダメだな。。。

「あら〜、美樹ちゃん、薫君の事知ってるの?」

「そりゃぁ有名だもんっ♪
 『青学の海堂薫』でしょ?」

おばさんは俺に、丸い目を向けた

「薫君、有名なの?」

「さぁ?」

俺もよく知らないです
しかし、ミキちゃんとやらの、説明は続く

「中学でテニスやってたら、みんな知ってるよぉ〜
 青学テニス部って去年は全国大会優勝でしょ?今年はベスト4
 そこで部長やってて、おまけにこのルックスでしょ?
 結構女の子のファンいるんだから〜」

「へぇ〜っ」

って、おばさん感心してる場合か?
って、俺もそんな事しらねぇ

「ふぅん...薫君、アイドル並みだ?」

にやにや笑って、からかってやがるっ

「知らないっスよ!!」

「ホントにねぇ...なんで奏音ちゃんなの?
 もっと他に選び様があったんじゃない?あはははっ」

おばさん。。。もっとこう。。。なんだ、その。。。娘の良い所を認めてやれよ?

「ま、いいけどー♪私が連れて歩ければそれで♪♪」

結局はそこか。。。
まったく、涙が出そうだぜ。。。

「そういえば、美樹ちゃん高校は?」
よかった、俺の事から話題がそれたぞ
「S大付属狙いなんだけどねぇ、どうかしら?
「すごいのねぇ?」
S大付属って、あのS校。。。だよ、な?
そりゃすげぇよ。。。
ホントなら、葉末も中学はそこを狙わせるつもりだった学校だ
「そちらはエスカレーター?」
「そうなの、いくら内部受験があるって言ってもね
 普通の受験に比べたら、なんにもないようなものだもの〜」
俺もそう思うっス
だから、今もテニスに打ち込めるんだしな。。。

そこで俺のケイタイが鳴る、この呼び出し音はかのんからだ

「おう、どうした?」

おばさん達は、まだ楽しそうに井戸端会議らしきものを続けていて、
電話に出た俺にも気付いてない

(お母さんの携帯に電話しても出ないから...)

そりゃ、ま、こんだけ話に花が咲いてたら。。。

(ごめんね...そこにいるなら、かわってもらえるかな?)

「俺から用事、伝えようか?
 今、お前の友達の母さんと話してるんだけど...」

(ううん、ちょっと...だから...ごめん)

変なヤツ、言付けなら俺でもできるのに
俺に言いにくい事なのか?
それとも、信用されてない?
またネガティブ思考に陥りそうになるが、持ち前の精神力でそれを振り払い、
かのんはおばさんに用事があるんだと、自分に言い聞かせる

「待ってろ...
 おばさん?電話、なんスけど...」

おばさんは、ん?あ、ごめんなさいね〜と、モモセのおばさんに少しだけ頭を下げる
それを合図に、井戸端会議も終了したようだ
モモセのおばさんは、がんばってね、と俺に告げ。。。
って、何を頑張るんだろう?
ま、いいけど
ミキちゃんは俺の手を握ってブンブンと振り回す。。。これは握手?。。。
そして
「青学の海堂薫にさわっちゃったー」
きゃー、って言いながら、って食料品売り場へと消えていった
わけわかんねぇ

モモセ母子から目線をおばさんにもどすと、
おばさんは、少しだけ困った顔になって、かのんに何か指示をしていた

。。。何か、重要な事?

俺は少し心配になる
やっぱり、かのんを一人で家に残してきたのが悪かったんじゃ。。。

「じゃあ、奏音ちゃんとりあえずはあるんでしょ?
 ...うん、ハイハイ...じゃ、ね」

ふぅっと、頭を傾げて考えながら、俺にケイタイを返す

「ハイ、薫君、ケイタイ...
 ケーキ、どれにするか決めた?」

「え、あ...それじゃ...アップルステュードル...」

「お!なかなか良いチョイスだね
 よし、それなら...おっきいの一本買って帰ろうね?
 どこかの食いしん坊がよく食べるから」

なんだかんだいって、やっぱりかのんの為、じゃないか。。。
アップルステュードル。。。
きっとお前は、半分くらいぺろりと食べちまうんだろうな?
かのんのウマそうに食べる顔を想像して、顔が緩んだ

「薫君、私ドラッグストアに用事があるんだけど、一緒に行く?
 それとも先に車に戻って待ってる?」

「あ...沢山買い物、ありますか?」

「ううん特には...薫君、何かいるものあるかな?」

「いえ、別に...あ...あのスポーツドリンク欲しいし、俺も...」

「それじゃ、もうちょっとデートの続きね♪」

おばさんは、俺の手を握ってドラッグストアへと歩き出した

ドラッグストアへ着くと、レジにはもの凄い行列
おばさんは、あらららら、ラッキーボーイのご利益なしかぁ、と笑う
「よし、薫君」
「ハイ?」
「別々に必要なものをとって、レジに集合ね
 薫君が先なら、私がそこに並ぶ
 私が先なら、薫君が私の所に来る、ね?」
「ハイ」
ナルホド。。。一緒にぐるぐる見て回るよりも、時間短縮できるし、
並ぶ時間だって短くてすむ

「ハイ、解散っ!」

それを合図に、俺はスポーツドリンクなどがあるサプリメントコーナーへ、
おばさんは、生活用品。。。か。。。

俺はさっと自分の欲しい物を見つけて、レジに並んで待っている
あと5〜6人、と言う所で、おばさんは、また買い物かご一杯に品物を詰めてやってきた

「わーい、やっぱりキミはラッキーボーイだ」

。。。わけわかんねぇ。。。

そして会計がはじまる
各種洗剤。。。普通の食器用洗剤に、食器洗浄機用。。。
あと風呂場、トイレ、水回り。。。洗濯洗剤に。。。
『特にいるものはない』じゃなかったのか?

俺はそこで見慣れないものを発見した

コレ。。。?

。。。あ。。。

わかってしまった。。。
そりゃ、かのん。。。俺には言えない。。。よな。。。
俺だって、やけに明るい色使いのそのパッケージの中身に気付いて、
かなり、気まずいんだが。。。
それをおばさんに悟られるのは、もっと気まずいわけで。。。

よし、知らんぷりだ、知らんぷり
買ったものは自分で詰めるシステム、か。。。
うん、『ソレ』には触らないようにしよう、うん、うん。。。

しかし、俺は知らなかった
『ソレ』は、キャッシャーを通すと、そのまま別の籠に移される事はなく、
中身が見えないように、紙袋に詰めてから、籠に移された
ふぅん。。。

俺の知らんぷり作戦はどうやら上手くいったようで、
おばさんもぜんぜん気にしてない様だ

。。。助かった。。。

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あきゅろす。
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