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よみもの~中等部編
9 ~hazue

地の底から響いてくるような、重たい音
でも、今日は雰囲気がいつもとちがうな、と感じた
いつもこの曲を弾く君は、無敵な笑みを浮かべるのに、今日はとても。。。?
何だか君らしくない、とても、怖い顔だ

そして僕はなぜかその表情と、ピアノの音に、
僕自身の中にある葛藤を引きずり出されるような気持ち悪さに襲われた

そして急に後悔が押し寄せる
僕は兄さんに『あの事』を知らせる必要があったのだろうか?
だけど
あまりにも重すぎる気持ちだった
大好きな人を侮辱されたときの悔しさ
やり場のない怒り
どうしてあげる事もできない情けなさ
そして、僕は知ってしまったんだ
僕達が目立てば目立つ分、かのんちゃんがもっと辛くなるって

あぁ、そうか。。。
兄さんは与えたかったんだ
本当は

だけど与える事で
彼女を追いつめてしまう事を
それを恐れていた

そして、かのんちゃん。。。きっと君の事だ
自分が侮辱されるよりも、僕や兄さん、そして大切な人たちが侮辱される事に耐えられなかったんだろうね?
自分に与えられない辛さよりも、
与えられる事によって、大切な人達が傷つく事を恐れた
だから、何事もなかったかのように振る舞って
僕を心配させないようにと、笑ってみせた

僕には、かのんちゃんや兄さんのように、
感情を自分の胸にだけとどめておけるだけの強さはない
そして自分が傷ついてまで、相手の事を想うだけの強さも


本当に

兄さん
あなたはすごい人ですね

僕はとうていあなたには敵わない


桃城先輩もきっと僕と同じ気持ち、だったんだろう

先輩はずっと彼女の事を好きだった
きっと今も

でも、二人を知れば知る程、
自分には敵わない、って、思い知らされる

 『俺達にはそんな愛し方できないだろう?』

本当ですね
僕には『無理』です

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