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よみもの~中等部編
6 ~hazue

お見舞いの後は、一緒に昼食をご馳走になる予定だった
だけど、かのんちゃんは自分だけ行けない、と、拗ね、
おじさんがかのんちゃんのご機嫌をとる
そんなかのんちゃんを見ているだけで、僕は幸せな気持ちになれるんですよ?

「僕はかのんちゃんと留守番してます」

僕がこういうと、拗ねた顔がふわっと笑顔に変わる

「やっぱり私、はずえクンのこと大好き♪」

そんな君にイジワルをしたくなる

「だって、誰か一人くらいかのんちゃんの監視役がいるでしょう?」

笑顔が一瞬引きつって、もーっ!とむくれるかのんちゃんもかわいい
ころころと変わる表情を、一瞬でも見逃したくない
あぁ、なんで僕はこんなにも君の事が好きなんだろうね?
まいっちゃうな。。。

昼食は『全く足りない』病院食
あいかわらずかのんちゃんは、足りないー、と文句を言う
「あとでケーキ食べましょうよ?
 えぇと、リハビリすんでから、ね?」
「リハビリの前、じゃ...だめ?」
少し困った顔で僕の顔を覗く
「自分にご褒美としてとっておいた方が、一層美味しくなると思いますよ?」
僕のヘリクツに、あー!と納得したかのんちゃん
本当に、素直でかわいい

「じゃあ、リハビリ、頑張ってきますね
 あ、ぜったい見ちゃダメですよ!」
「別に僕はどんなかのんちゃんでも好きなのにな」
ちょっと拗ねてみせると、眉を下げて、だって。。。と、口籠る君

「約束します
 絶対覗きにいったりしませんから、早く終わらせて、帰ってきてくださいね?
 僕、待ってますから」

「リハビリの後、ピアノ弾いていいって言われてるの」

うれしそうな君の顔に、自然と僕の顔もほころぶ

「じゃあ、リハビリが終わる頃、僕ピアノの所で待ってますね?」

ふふっと笑って、またあとでね、と手を振り部屋を出る

かのんちゃんが部屋を出て行ってから、
急に部屋が広く感じた
がらん、として、物悲しい

無造作にコーヒーテーブルの上に置かれた数冊の楽譜
これは、ショパン。。。ソナタ
楽譜の真ん中辺りから、ページをめくった跡がついている
僕ははらり、と、後ろからページをめくってみた

楽譜には沢山の書き込みがしてあって、
文字で書かれているところもあれば、記号だけのところもある
音符をぐるぐると囲むようにマルがついているところ
なんとなく意味の分かる記号
暗号のような記号
矢印がザッとひっぱってある所

はらはらとページをめくっていくと『Final』という文字が目に入った

ファイナル。。。終楽章?
これは、あの力強い曲?

すごいな
僕にとって、この未知の記号の羅列が、あのすばらしい演奏になるんだ

かのんちゃんが何度もなぞったであろう、この記号をそっと撫でてみる
それだけで、何とも言えない気持ちになる
僕は目を閉じ、かのんちゃんのピアノを弾く姿を想像した

目の奥が熱い
僕は。。。泣いてるのかもしれない。。。

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