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よみもの~中等部編
canon~2
今日は入学して初めてのレッスンがある日
いつものレッスンと内容は変わらないんだろうけど
やっぱり「岩崎門下生」としての初めてのレッスンは、キモチが違う
今日は得意のベートーベンピアノソナタ1番、練習もバッチリだし、早く先生に会いたくて仕方がない

帰りの学活が終わって、掃除当番をこなしてから第2音楽室へ向かった
コンコン。。。ノックをして扉を開けると、まだ先生はいらしてなかった
窓をあけ、ピアノのカバーをはずし、レッスンの準備をする
まだ風は冷たいけど、日差しは強く、暖かい
外からは、運動部の元気なかけ声がきこえてくる
こういうの、なんか中学校の部活〜ってかんじで、訳もなくうれしくなってしまう

ふと下を見ると、テニスコートが見えた
ポコーン、ポコーンとボールを打つ音が響く
マンガ大好きお母さん愛蔵の昭和の名作『エースをねらえ』をしっかり読みあさった私としては
麗しい先輩にあこがれる、一年生っていうシチュエーションもステキだと、ふわふわと想像する
いいなぁ、私もやってみたいな。。。と、おもったところで、どうにもならない
特に、手首に負担がかかるようなスポーツは御法度、だ
わかっている、プロの演奏家になることを目標にがんばっているんだ
その為にいままでも、いろんなことをあきらめてきた
いや、あきらめてきたんじゃない、自分で決めた事

そんなことをぼんやりと考えていると、「奏音ちゃん、おまたせ」と、岩崎先生がいらっしゃった

レッスンは楽しかった、広い部屋で思いっきり演奏できるって、気持ちがいい
「そこはしっとりよ〜、奏音ちゃん、元気よすぎる」
と、笑いながら指導がはいる
あぁ、やっぱり、先生のレッスンは好きだ
もしお母さんだったら、鬼のように怒ってる。。。いや、怒鳴りまくってるに違いない
そう思うと、ますます楽しくなってきて、
Adagio dolce が、かわいらしさを通り越して、appassionate、情熱的に
いや、それならまだしも、ところどころ、con fuoco 火のようにがんがんピアノをならしてしまった
一通りレッスンが終わり、先生が今日の要点と、次回の課題を出す
そして、ぽつりと、つぶやきともとれる言葉をもらした
「奏音ちゃんは指が強いから、とっても力強いベートーベンを弾くけど
 それだけじゃなくて、表情をもっとつけることで、もっともっと魅力的な演奏ができると思うわ」
私はその言葉に、苦笑いをしてしまった
えぇ、先生、ごもっともです、でも、私、楽しくって楽しくって、仕方がないんです、と笑い返す
「そうねぇ、好きな人でもできたら、もっと違ってくるかもよ、ふふ」
「せんせーーーーーーいっ、何冗談言ってるんですか?
 私の好きな人は、ベートーベンですよ、もう、恋しちゃって仕方がない」
なんて、冗談をいっていると、時間になったんだろう、次のレッスンの2年の吉川先輩が教室に現れた
私は先生と先輩に挨拶をして、教室を出た

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あきゅろす。
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