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よみもの~中等部編
18 ~kaoru

3時過ぎにはかのんは病室に移される事になった
オブザベーションルームから出てきたかのんは、ぐっすりと眠っている
でも前の入院の時のように、真っ白な顔ではなかった
痛み止めのせいで眠っているだけだから、心配ないという
医者は、それにしても、良く眠ってますよね、と笑った

母さんは病室に移ったかのんの様子に安心し、
そろそろおいとまします、と、おばさんに告げた
おばさんも、いつも本当に助かってます、と深々と頭を下げる

俺はこのまま選抜の練習場に行こうかと思ったが、
母さんは、今日の練習は行けないわね?と笑う
そうだった、今日は俺、体調不良で早退した身だ
別に学校とは関係ないが。。。どうせ桃城だけだし。。。
やっぱり今日はおとなしくしておく方がいいだろう

それに
そうだな。。。どうせ練習にも参加できないなら。。。
「俺、時間まで、ここにいてもいいですか?」
不思議と、その言葉が素直に口をついた
おばさんは、あらぁ、と、笑い、
母さんは、イタズラしちゃダメよ?と、もっと笑う

「何もしないよ...って、何もできねぇだろこれじゃ?」

俺は笑って答える

「薫君、じゃあちょっとお願いできる?
 私、ちょっと買い物して、お父さんのお迎え行ってくるから...
 あ、晩ご飯は、おいしい病院食、私の分食べてて?」
「ハイ」
「じゃあ薫、ここを出る前に電話してちょうだいね?」
「わかったよ」
部屋を出かけたおばさんが、振り向く
「そうそう、お食事ね、5時半に頼んであるから、
 奏音ちゃん、起きなかったら叩き起こして食べさせてくれる?
 7時以降、飲食禁止だから」
「そうなんですか?」
「よろしくね」
俺は自分が信頼されている事がうれしかった
自分の母親にも、そして、かのんの母親にも


二人が病室から出て行ってからは、
俺はベッドの横にある小さなソファに腰掛けて、
さっき買った雑誌をペラペラとめくっている
時折、ふぅ、っと小さな溜め息のような声をだして、
かのんの頭が揺れる
まだ起きないのかな?

ピッピッと、小さな機械音がやけに部屋に響く
これは。。。そうか、点滴のスピードをコントロールしてるんだ。。。
点滴の管を目で辿ると、手の甲まで続いていた
綺麗な手なのに。。。何もこんな所に針をささなくても。。。
なんだかかわいそうで、つい、そこに触れてしまいそうになった
が、触れる一寸前で俺は、かのんの指へ自分の指を滑らせた
冷たい。。。

俺は折りたたみの椅子を出して、ベッドの脇へ移動した
冷たい指先を暖めてやりたかった

本当に綺麗な手だ

ずっと触れていたかった
それなのに
どうして俺は、こんな綺麗な手を振り払ってしまったんだろう

そっと撫でて、ゆっくりと握る

目が覚めてしまったら
もう触れられないかもしれない

そう思えば思う程、もっと触れたくなる

こんなにも俺はお前を欲しているのに
なんで放してしまったんだろうな?

そっと髪を梳すくと、かのんは、ん。。。と、小さい声を漏らす
でも起きない
ホントに良く寝てる
もう一度髪を梳き、頬を撫でる
それでも起きない
なんだか楽しくなってきた
もう一度頬に触れ、指先でそっと、唇に触れてみる
少し乾いてる

俺は、バッグから蜜蝋のリップクリームを取りだし、
薬指で少しすくってかのんの唇に塗ってやった

母さんに無理矢理持たされた、指で塗るタイプ
口紅タイプなんて絶対イヤだ!と拒否してたら、母さんが買ってきた
唇が荒れたらイロイロと不便でしょ?って

そん時はよくわからなかった
別に不便な事なんて、ないだろ?って

でも
ホントだな?

唇が切れちまったら、お前に触れるのも躊躇われる
血の味のするキスなんて最低だろ?


艶を帯びた唇
ベルガモットの香り


かのん

惜しみないキスをお前に

******
途中経過報告 13.04.19

コラコラw 海堂君、イタズラしてるしw

…このペースで行くと、海堂君のお誕生日までに、おハナシが追いつかない確率98%
ちょっと焦ろうw
それとも...番外編にしちゃうか?


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