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よみもの~中等部編
15 ~kaoru

保健室へ入ると、先生はかのんを床に敷いたラグの上に降ろす様に言った
かのんは大丈夫、と言いながら、
クッションを枕にして身体を倒し、足を押さえている
だが、冷や汗をかいている所を見ると、相当痛いんだろう
先生はかのんのかかりつけの病院に電話をし、救急車を呼ぶ手配がされた
そして電話を切ってすぐに今度はかのんの家へ連絡をした

そういえば。。。
「あの...弟は?」
「彼はあとはお兄さんに任せます、って教室へ行ったわ」
「そう、ですか...
 あの...すみません、ここで携帯電話、使ってもいいですか?」
「どうして?」
「家に電話をしたいんですが...」
保健の先生は、そう、と言って、特別に許可します、と笑う

「母さん、俺」
(薫?どうしたの?)
「かのんがまた足を痛めて...今から病院に行くんだけど...」
(そんなに悪いの?)
「わからない、けど、さっき転んで...
 おばさん来るの遅くなると思うし、その、おばさんが来るまででも、
 母さんがいてくれた方がいいかと思って」
(そうね...智子さんには、連絡は?)
「さっき、先生が連絡してた」
「海堂君、電話、代わってもらえるかしら?」
「え?あ、ハイ...母さん?保健の先生が話をしたいって」

俺は携帯を先生に渡した
先生は簡単に状況を母さんに伝えているみたいだ、
でも俺は、電話の内容よりも、かのんの事が気になって、
ソッチばっかり向いていた

「...ええ、そうですね...わかりました
 私から説明をしておきますから...ハイ、よろしくお願いします」
そう言って先生は電話を切り、海堂君、と俺にケイタイを返した

間もなくして、救急車は静かに職員用の入り口に到着した
ストレッチャーがここまで運ばれ、応急処置をされる間、
俺は保健室の端で、またバカみたいに突っ立っている
「本当は教室に行きなさいって、言いたい所だけど...
 早退届け...これ、事務室に持って行って、もう帰りなさい」
「あの...」
「お母さん、ちゃんとわかってらっしゃるのねぇ」
やさしい顔で笑い、俺の背中をポン、と叩く
かのんが唸る声がきこえ、俺はビクッ!と、震える
そんな俺の背中をまた、ぽんぽん、と叩き
「後でね」
と、笑う
俺はまだちゃんと状況がつかめずにいると、先生はこそっと耳打ちをする
「私は先に菊池さんに付き添って病院に行ってるから、
 早退届出したら、直ぐに病院に行きなさい
 お母さんも来られるそうよ?」
「...あ...ハイ...」
救急隊員によって応急処置をされたかのんは、
ストレッチャーに移される時、また、唸り声を漏らした
相当痛いんだ。。。

先生はまた、ポン、と俺の背中を叩き、早く行きなさいと笑ってくれた

俺は保健の先生の書いてくれた早退届を見ると、
『理由』の欄には、『体調不良、家庭へは連絡済』と書かれていた
ホントはすこぶる元気なんだが、な、と苦笑する
俺は早退届を事務の受付に提出し、失礼しますと、玄関へ向かった

登校時間ギリギリで、遅れる!と、走る生徒の流れとは逆に俺は足をすすめる
校門を抜け、一つ目の角を曲がった所で、俺は走った


かのんが俺を信じてくれないのならどうすればよかったんだ?

俺はその答えを知っている

かのんが欲してるものはなにか

それがわからなければ、どうするべきだった?

わかっていながら、俺はそこから逃げてばかりだった

まったくどうしようもねぇな、俺。。。
同じだ

前にも同じ事、やっただろ?
そして、その度に自分で決めてたじゃないか
お前がどう思っていても、俺にとってお前は特別で、
絶対にその気持ちは手放さない、って

お前が葉末の事を好きでもいい
他のヤツを好きになってもいい
どんなに俺の事を避けてもいい
俺の事を、嫌ってくれてもいい
でも
でも俺はお前の事が好きなんだ

お前といるだけで俺は幸せだったんだ
お前がいてくれるだけで幸せなんだよ

俺がお前の事を想うのは。。。いいだろ?
お前の事を想っているだけでいい

もう、名前を呼んでくれないかもしれない
もう、笑いかけてもらえないかもしれない
もう、触れさせてもらえないかもしれない

それでもいい

俺にとって、お前は『特別』なんだ
それだけでいい

お前のくれた優しさ
それだけでも俺は幸せ、だろう?

俺は伝えなきゃいけないんだ


一番大切な事を

俺が、お前を想う事を、許してくれないか?

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