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よみもの~中等部編
13 ~kaoru

もう考える事はなかった
気付いたときには、俺はかのんを抱きとめていた

「葉末、お前には、無理だ」

葉末の顔が一瞬だけ悔しそうに歪んだ
「かのんは細く見えても、結構重いから、な?」
だけど俺は、気付かない振りをして、冗談を交えながら言葉を紡ぐ
葉末は賢しい
その一瞬だけ見せた表情をするりと逃すと、
いつもの生意気そうな顔を向け、俺のジョークに応える
「ホントですよ、兄さん、
 僕、かのんちゃんと一緒に転んでしまったらどうしよう、って、
 ドキドキしてたんですよ」

気を失ってる?
こういうのを糸の切れた人形みたいだ、っていうけど、人形はこんなに重くない
俺は確かに、かのんの身体の重みを感じていた

俺は背中と腿に腕をまわし、かのんを縦に抱きなおした
膝に負担がかかるから、横抱きにはできない
考えなくても、俺の身体はどうしたらいいか知っているようだ

かのんはちいさく呻いて、
俺の腕の中で身体が、びくんっ、と震えた

「海堂君...私、自分で歩くから...はなして...」

弱々しい声
俺の胸をそっと押す

「歩けそうだと思ったら、こんな事するかよ、バカが...」

やっと触れることができたのに?
本当はずっと、こうしたかった
ずっとお前を抱いていたかった

「葉末、かのんの荷物、持ってきてくれるか?」

かのんは、ふぅっと息をついた

「保健室でいいな?」

俺がぐっ、と腕に力を込めると、
かのんは小さくうん、と頷いて、俺に身体を預けた

「僕、先に保健室へ行って先生に説明しておきます」
「すまない...頼む」
すまない、葉末
お前だってコイツの事が好きなんだって、
お前の方がコイツの事を守ってやれるんだろうって
そうわかっていても、
俺はどうしてもかのんから離れられない

これだけは。。。どうしようもない
それくらい俺はかのんが大切なんだよ。。。


ざわざわと、周りの声が煩わしい


何とでも言えばいい

かのんが俺達につきまとってんじゃねぇ
俺達が。。。俺が、かのんをはなしたくないだけだ

俺にとってかのんは『特別』なんだから

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