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よみもの~中等部編
12 ~hazue

朝練が終わり、僕はさっさと後片付けと着替えをして、生徒玄関へ向かう
早くしないと、かのんちゃんが来てしまう
僕はちゃんと時間を見計らって、
偶然を装いながらかのんちゃんをお迎えするんだ

ほら、時間ピッタリ、だ

今ちょうど玄関に入った所
僕は足を速めて、踊り場でキミを捕らえる

かのんちゃんを呼び止めようとした瞬間
杖がずるっと滑った
かのんちゃんは大きくバランスを崩し倒れる

「かのんちゃんっ!?」

僕は駆け寄って、倒れているかのんちゃんの肩に触れる
フルフルと震える細い肩
本当に。。。今にも壊れてしまいそうだ、ね?

「かのんちゃん、痛むんですか!?」

浅い呼吸、微かな唸り声

「立てませんか?」

僕はめくれ上がったスカートを気にしながら、彼女を抱え起こすと、
顔をぎゅぅっとしかめて、苦しそうな声を上げる
体勢を変えた事が良くなかったんだろうか?
僕は、焦った。。。
どうしたらいいんだろう?

「だ...いじょうぶ、だから...」

こんなに苦しそうなのに、かのんちゃんは僕に笑いかける
大丈夫なわけないじゃない?
なぜ、キミは笑うの?
お願いだから、我慢するのをやめて??
僕はどんなキミだって、愛してるって、
どうしてわかってくれないの?
なぜ?

かのんちゃんは、杖を頼りに立とうとしている
僕は支えてあげようと、肩に腕を通した
だけど、かくん、と膝が崩れる
必死に踏みとどまるけど、
倒れないように踏みとどまるだけで精一杯だった

そんな時、笑い声が聞こえる

「みっともなぁい」
「ホントよねぇ」

みっともない?
こんな簡単なことができない僕がみっともないのか?
彼女を支えてあげるだけで精一杯の僕が?

かのんちゃんの身体が、ふるふると震えていた

みっともなくてもいい
それでも僕はキミを守る
その為なら、自分がみっともないのは一向にかまわないよ
誰かさんとは違って、ね?


「まったくだ、みっともねぇな」


ボソリ、とつぶやく兄さんの声が聞こえる

かのんちゃんは、はぁ、と、震えながら、
とても弱々しい溜め息をつく
こんなになったかのんちゃんを、
それでもまだ、
あなたの事を愛しているカノンちゃんを、
兄さん、
あなたはまだ、傷つけるんですか?

僕は心底兄さんを軽蔑しますよ

僕は、ね
あなたとは違う
どんなにみっともなくても、彼女を一番に守る

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あきゅろす。
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